外部の出資を受け入れ、研究開発のスピードを加速

――大学院在学中の2006年に前身となるPreferred Infrastructure(PFI)を設立しました。起業のきっかけは何だったのですか。

 優秀なメンバーと出会ったことが大きいですね。共同創業者の岡野原(大輔・ 取締役副社長)とは、大学1年生からクラスメートだったこともあります。また、プラグラミングコンテストに参加して、コンピューターサイエンスの分野に秀でたメンバーと出会い、一緒に何か面白いことをやろう思ったのが最初です。もともと会社をつくる前に、バイオベンチャーで働いていたことがあって、そのときに就職するのではなく、起業するという選択肢もあることを知って、自分でもやってみようと考えました。

 最初につくったのは、エンタープライズ向けの大規模全文検索エンジンです。ところが営業なんてやったことがないから、最初の頃は苦労しました。

――学生時代に起業したことで、産業、社会の課題やニーズをとらえることは難しくありませんでしたか。

 そこはやはり悩ましいところです。産業界でいま何が必要とされているのか、たとえそれがわかったとしても、テクノロジーの進化でガラッと世界が変わってしまうので、未来を想像しながら何が本当に必要なのかを考えていかないといけません。いまでも非常に難しいことですが、起業した当初は想像さえできなかった。ただ、起業して10年経つと、徐々にやりたいことがはっきりしてきて、2014年にPFNをつくりました。

 IoTに人工知能を適用し、大量のデータを集め、処理するだけでなく、リアルタイムで制御に使っていくことが、間違いなく世界を変えていくだろうということで、PFIからPFNをスピンオフしたのです。PFIとPFNの大きな違いは、外部からの出資を受けて事業を加速させることです。PFIのときは、出資を受けない方針で会社を経営していたので、自由に研究開発ができる半面、お金を稼いで次の研究開発に投入していくスピードが十分とは決して言えませんでした。PFNでは、そういった限界もなく、やるべき研究開発に全速力で取り組む環境になってきています。

――NTT、ファナック、トヨタから、これまで20億円超の資金を調達しましたが、主な資金使途は。

 人件費がメインです。人工知能の研究は、いかに優秀な人材を集めるかがカギを握ります。グーグル、フェイスブックなどシリコンバレーの企業が人材獲得競争に走っているので、彼らに負けないようなインセンティブは絶対に必要です。計算能力も重要です。グーグルがアルファ碁で成果を上げた背景には、強大な計算能力があったからで、計算資源を確保するためにも資金を使います。

 人工知能をつくるだけでなく、人工知能を適用するデバイスの研究を深くやっていくことも重要です。そのためにいまロボットの実験も行っていますし、今後はライフサイエンス、バイオテクノロジーといった領域の実験も進めようとしているので、実験設備を導入しようとすると、それなりの資金が必要になってきます。