隠れたインサイトの発掘

 ワークフローにおけるデータ量が増えれば、インサイトを見つけ行動につなげるための時間もそれだけ多く必要となる。特に株取引、マーケティング、製造などは、データの流れが増えるほど緊急性や有益性の高い情報を見つけるのが難しくなる分野だ。

 しかし機械を助手にすれば、人々はビッグデータに埋もれた貴重なインサイトを発掘できる。我々の調査では、企業は少なくとも4種類の分析作業においてこれを実践している。

●市場のモニタリング

 ニューヨーク市を拠点とするデータマイナー(Dataminr)は、さまざまな指標を基に、株のトレーダーにとって意味のある情報を含むツイートを特定している。同社はネットワーク上での情報の伝播を監視することで、関連性と緊急性を測定する。トレーダーに3分早くアラートを送るだけでも、莫大な利益につながることもあるのだ。

 また、ニュースを配信するメディア企業も、いち早く報じるべき最新のネタを見つけるためにデータマイナーを活用している。

●予測モデリング

 同じくニューヨーク市に本社を置くセールスルー(SailThru)は、企業のマーケターがより効果的な販促メールを配信できるよう、メールとウェブデータを解析し顧客情報を作成している。同社のシステムは、まず顧客の関心事(サイクリングとロッククライミングではどちらにどの程度興味があるか、など)と購買動向を学習する。その後、個々人について何をいつ買うかを予測し、適切なメッセージを最も効果的なタイミングで届ける。

 同社の顧客企業でアウトドア用品を扱うクライムは、このパーソナライゼーションを導入後の90日間で、メールからの売上げが12%増、メールからの購入総数が8%増という成果を上げた。その後、パーソナライゼーションに加えて予測の機能も導入したところ、1000件のメール配信当たりの売上げは175%増え、離反率が72%下がった。

●根本原因分析

 サンフランシスコおよびミシガン州リボニアを拠点とする、製造アナリティクス企業のサイトマシン(Sight Machine)は、複雑な品質管理の課題に対しソリューションを提供している。

 同社の顧客企業が抱える問題の1つは、アラートの認識に関するものだ。品質に絡む問題や出来事が生じると、製造ラインにある数千もの異なるセンサーから、数百ものアラートコードが発信される場合がある。サイトマシンのソフトウェアは機械学習によって、こうしたアラートのパターンを認識する。それによってエンジニアは、問題の根本原因に関わる限られた数のアラートを素早く特定でき、それ以外の連鎖的なアラートと区別できる。

●予知保全

 機械学習は、工場内のデータから人力では見つけられないパターンを認識することで、人間の意思決定を助ける。

 ふたたびサイトマシンの例になるが、同社のシステムはトラブル発生直前のデータのパターンを分析することで、エンジニアが問題を見越して未然に防ぐのを助ける。ロボットによる製造ラインを持つあるクライアントは、サイトマシンのシステムによって、1ヵ月間でダウンタイムを50%減らし、効率を25%向上させた。その業界の効率改善率は月間1~2%程度が通常であるため、それよりはるかに高い。

 マシン・リエンジニアリングはまだ黎明期にある。我々は今後の調査を通して、機械による支援の新たなあり方をさらに探っていくつもりだ。

 しかし、すでに明らかなことがある。今日の企業が直面している、データの氾濫とその結果生じる障害・制約に対処するうえで、機械学習は有力な手段となるのだ。それによって従業員は効率と成果を高め、企業はワークフローだけでなく収益も向上できる。

 企業にとってデータが避けて通れない道ならば、その道を拓くのはマシン・リエンジニアリングなのである。


HBR.ORG原文:How Companies Are Using Machine Learning to Get Faster and More Efficient May 03, 2016

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H・ジェームズ・ウィルソン(H. James Wilson)
アクセンチュア・ハイパフォーマンス研究所のマネージングディレクター。情報技術およびビジネスリサーチを担当。

シャラド・サチデブ(Sharad Sachdev)
アクセンチュア・アナリティクスのマネージングディレクター。

アラン・オールター(Allan Alter)
アクセンチュア・ハイパフォーマンス研究所のシニア・リサーチフェロー。