私は長年にわたり、タフで競争の激しいさまざまな業界で、大きな成功を収めてきた優良企業の数々を研究してきた。それらの企業について考えるうえで、ドーアの「金目当て」と「伝道師」という区別は役に立つ。特殊な状況に恵まれているわけでもないのに、なぜ並外れた成果を上げることができたのかが、理解しやすくなるのだ。そしてジョン・ドーアの洞察に合致するような会社をつくることは、最先端の業界でなくとも可能である。

 DPRコンストラクションは、問題が多く変革が進みにくい建設業界にあって、非常に思慮深く進歩的な存在である。創業者たちは、自社が成功だけでなく意義も追求していることを明確に表明してきた。DPRは「コア・イデオロギー」の冒頭でこう宣言している――「当社は偉大なものを生み出すために存在しています」。理念をコア・イデオロギーという名の下に掲げている企業を、あなたは他にご存知だろうか。そしてこんな文言もある。「当社は他のすべての建設会社と異なる、最も進歩的な建設会社であることを目指し、意義を追求します」

 SOLクリーニングサービスは、北欧で「起業家精神に富む企業」として最も称賛される1社である。同社はオフィス、病院、共同住宅などの清掃という文字通りの「汚れ仕事」を、スマートで、機敏で、愉快な、ときに従業員を踊らせるようなものへと変えた(モチベーション向上の研修でダンス大会を開催)。

 創業者リーサ・ヨロネンと同僚たちは、仕事のあり方そのものを再考することで、急成長する組織をつくり上げた。清掃業に携わるのが夢だという人は少ない。だが、他のすべての業態と同様にこの分野でも、従業員にチャンスさえ与えられれば、成長、創造性の発揮、規模拡大のためのあらゆる機会が生まれるのだ。

 同社は、意思決定の権限を本社から現場へと移した。各地域のチームとオフィスは、成果目標の設定とその達成方法を自分たちで決める。さらに、予算策定、従業員の採用、クライアントとの交渉までをも現場の人員に任せている。ヨロネンは「創業者による貴族制」を拒み、ボトムアップ型のアイデアと貢献を選んだのだ(SOLの革新的なマネジメント手法を詳述した『ファストカンパニー』誌記事)。

 さて、あなたは金目当てだろうか、それとも伝道師だろうか? この大きな問いに答える方法として、まず3つの小さな問いについて考えてみよう。ジョン・ドーアによる区別を、より現実的に捉えられるはずだ。

●あなたが考える「成功」の定義には、何か特別な意義を追求する要素があるだろうか? そこには他者を巻き込む魅力はあるだろうか?

●自社製品の特長を表す「価値提案」に加え、自分の信条を表す「価値観の提案」はできるだろうか?

●あなたと同僚たちは、他者と異なる方法で競争しているだろうか? その諸々の行動は、心に響く有意義な何かを生み出しているだろうか?

 世界で最も成功しているベンチャー投資家の1人が、自社で新たな任を受け入れようとしている。この機会に彼の洞察の一部を、あなたの会社でも取り入れてみてはいかがだろう。


HBR.ORG原文:The Best Entrepreneurs Are Missionaries, Not Mercenaries April 11, 2016

■こちらの記事もおすすめします
企業理念を業績に結びつける3つの視座
日本企業が目指すべきは「起業家的組織」

 

ウィリアム・テイラー(William C. Taylor)
『ファストカンパニー』誌の共同創刊者。最新刊は『オンリーワン差別化戦略』(ダイヤモンド社)。既刊邦訳に『マーベリック・カンパニー 常識の壁を打ち破った超優良企業』(日本経済新聞出版社)がある。