発想力は、現代のマネジメント力

 たとえば、ウーバーやエア・ビー・アンド・ビーなどは、シェアリング・エコノミーという言葉で語られがちだ。しかし、著者は「アイドル・エコノミー」と定義する。つまり共有(シェア)するのが目的ではなく、リソースの空き(アイドル)を効率的に使う仕組みに注目しているのだ。情報密度が高まったいま、需要と供給のマッチングは小さな単位や時間で可能となった。その結果、リソースのマルチプルな活用が可能になったと、ネットワーク社会の本質を定義する。

 相変わらず、事例の適切さが秀逸である。自動車メーカーの事例と一緒にスキー場の例を並べる。また茨城県の話が出てきたかと思えば、スポーツウェアのナイキの事例が続く。一見異なる分野や産業の事例を、一つのコンセプトとして紹介する思考の表現方法だけでも、思考法の訓練として役立つだろう。

 そして本書で紹介する発想法を学ぶと、クリエイティブ職で言われるアイデアと、一般ビジネスパーソンに求められる事業開発力に何ら異なる点がないことも気づくであろう。どこまで、ものごとを本質的に考えることができるか。どこまで具象を抽象レベルに昇華させて考えることができるか。この思考の深さと高さが、新しいアイデアを生み出すのである。

 前例に囚われない発想法とは言いつくされた言葉だが、その本質は、ゼロから根本的に考えつくすことができる思考体力にすら思える。いまやいかなる仕事も前例踏襲では先が見えない時代である。そんな時代のマネジメントとは、オペレーションの管理でも効率化でもない。イノベーションこそが、マネジメントそのものの課題である。

 つまり本書は、アイデアが必要な職種の人のための発想本ではなく、マネジメントする人にとっての喫緊に必要な思考技術の本と言える。