二段変速IT≠マルチスピードIT

 多様化する企業のニーズに応えるためにはCIOは自身が指揮するIT部門をマルチスピード型組織へと転換しなければなりません。複合競争時代にはモノスピードでしか動けないIT部門に価値はありません。一部の企業がモノスピードITの次のステップとして目指す姿に「二段変速IT(Two speed IT)」があります。これは、レガシービジネスのペースを維持する巧遅型ITとデジタルビジネスの推進を支える拙速型ITを別々に持つ姿です。しかし、二段変速ITでは十分ではありません。実は、二段変速ITはマルチスピードITへの転換ができない企業が妥協策として目指す姿なのです。

 二段変速ITの世界では、巧遅型の開発・運用プロセスに精通する既存IT部門の役割は、当初の意図に反してレガシービジネスの安定的な継続のみに限定されかねません。そして、新設された部門横断のタスクフォースもしくは「第二のIT組織」が、デジタルビジネス戦略の策定とその推進の主導権を握るという結果になる可能性があります。実際に調査対象の経営者の81%が自社のCIOとIT部門は分岐点に立っており、デジタルビジネス推進の主導権を握るか、自らは身を引き他部門に主導権を渡すかという選択を迫られていると回答しています。いずれの選択肢を取るにせよ、経営者の88%がIT部門は守備範囲を広げ多様化する企業のニーズに後れを取らないようにする必要があると考えています4

 マルチスピードITの効力を発揮するには「個々の事業が必要とする進化の速度を咀嚼し、サービス供給側のペースをそれに合わせることができるか」がカギになります。多くの社内ステークホルダーがすべての事業ニーズに対して最大速度で応えればよいという短絡的な発想に陥りがちななかで、CIOは状況に応じて必要とされる対応速度と企業のオペレーティング・モデルの実態を調和させる重要な役割を担います。事業を支えるすべてのサービス部門が適切なタイミングでギアチェンジを行い適切な速度を選んで動く能力を持つことができれば、CIOとIT部門もレガシーシステムの刷新から、デジタルビジネスでの新たなイノベーション機会の追及にわたる幅広い取り組みを適切なペースで推し進めることができます。

88%

 経営者の88%がIT部門は守備範囲を広げ多様化する企業のニーズに後れを取らないようにする必要があると考えています4

出典

4 Accenture Strategy research on the intersection of business and technology, 2015.