大企業を中小企業にしたかったGE

日置 事業の出し入れを最も激しくやってきた企業の1つがGEです。GEは、巨体で、性質の異なる事業をいくつも持って、それでも驚くほど行動が速い側面も持っています。

入山 僕がアメリカのビジネススクールで教えていたときに、授業のいちばん初めに使っていたのが「GE Transformation」というジャック・ウェルチの改革をテーマにしたケースでした。ウェルチが就任して、事業を整理して、たくさんの企業を買収してGEを変えていったわけですが、結局、彼がやりたかったのは、GEという大企業を中小企業のようにマネジメントするということなんですね。

日置 なるほど。ウェルチからジェフ・イメルトが引き継いで、近年は金融ビジネスを重視したM&Aによる成長から、オーガニックグロース、つまり自社で製品やサービスを生み出す製造業としての成長へと再びシフトしています。ただ元の製造業に戻るのではなく、そこにデジタルという新しい要素を掛け合わせながら。そこでGEは、他のオーガニックグロースを主としてきた大企業ではなく、あえてスタートアップから成長の仕方を学び、FastWorksなどの新しい仕組みを取り入れています。ウェルチの志した成長の仕方とは違うけれど、中小企業感覚でマネジメントしたい、そういう小さくて速い経営をしたいという方向性は一貫しているのではないかと思います。「Stay lean to go fast」という言葉が、GE Beliefsという彼らのコアバリューの中の1つとして示されているように。

入山 FastWorksは、「リーンスタートアップ」というスタートアップ向けの事業立ち上げ手法を大企業に適用したものですね。顧客の求める価値に速く応えるために、プロジェクトを起こしてどんどんやってみるというスピード感は、たしかにスタートアップの得意とするところですから、そこから取り入れようというのは、さすがGEです。

日置 最近、日本企業の中でも比較的うまく変化しているところは、中小企業感覚があるように思います。トップから従業員まで意思疎通ができていて、企業の方向性や、自社がこだわるべき強みと他の力を借りてもいいところの判断基準が共通認識になっている。それに、「この技術が面白いんじゃないか」というと、研究やマーケティング、エンジニアなど色々な人が自然と集まってきて盛り上がるような、いい意味での小集団感覚があります。

入山 それは面白いですね。大企業でも、変わろうという局面では、中小企業やスタートアップの経営の意思の通りやすさや、新しいことに小さく速く挑戦していける感覚が大事になってくるんですね。