資源と価値創造を切り離した
ビジネスモデルを作ることが必要

――浪費を富に変えるCEが今後、さらに拡大していくには何が必要ですか。

 天然資源にも地球という惑星にも限界があります。大気汚染やCO2排出の問題があったり、海にダメージを与えたりする従来の経済システムを根本的に変えていかなければいけない。と同時に、市民や消費者がこれまでと同様に、便利な生活が送れるようにする必要があります。そのためには、資源(物質)と価値創造を切り離したかたちで新しいビジネスモデルを作ることができるかどうかがポイントになるでしょう。

 もう1つ、デジタル技術を使って職場の無駄を省き、生産性向上につなげるという取り組みも重要です。例えば、働き方を可視化して測定し、社員の生産性を上げるシステムを作る。実際、そうしたシステムを導入しているヨーロッパの航空機材メーカーもあります。

情報活用で3次元化したビジネスを
作り出したミシュラン

――デジタル技術の進歩は情報活用にも恩恵を与えていると思いますが、目に見える物質の効率的利用に比べてデータは見えないため、上手に活用できない企業は少なくありません。どのようなアプローチが求められますか。

 お客様の情報を収集し、ビッグデータとして活用するのも1つの方法です。仏タイヤメーカーのミシュランでは、タイヤを「製品」として売るビスネスモデルから、タイヤにセンサーを付けて「走行距離」を売る方向に転換しました。リースしたタイヤが一定距離を走ったら、それを引き取り、また新品のタイヤをリースするというシステムです。

 それによって、製造からメンテナンス、回収までを手がける3次元化したビジネス(時間軸を取り入れたビジネス)を作り出しました。回収したタイヤは「リトレッドタイヤ」(すり減った部分のゴムを貼りつけたタイヤ)として再生品化し、資源の有効活用にもつながっています。これこそ、天然資源から離脱したビジネスモデルの好例といえるでしょう。

 こうした変化に伴って、製品設計時にも従来とは違った評価軸ができました。これまでは長持ちしすぎるとタイヤは売れず、儲からなかった。しかし、サービスとして提供するには、タイヤの寿命を長くしたほうが儲かるから、長持ちするタイヤを作ることが必要になったわけです。そのため、より長期間使えるものを設計した技術者は、高く評価して報酬を上げるなどの施策を経営者は考えていかなければなりません。

 また、設計段階から再製品化や他産業への転売を考慮することも重要です。例えば、古タイヤは靴のメーカーに転売し、靴底のゴムとして再利用することができますね。

EUの「CEパッケージ」は
第一歩として理に適っている

――2015年12月、欧州委員会がCEの実現に向けたEU共通の戦略「サーキュラー・エコノミー・パッケージ」を世界で初めて採択しましたが、これについてはどう思いますか。

 EUは世界最大の市場ですが、天然資源は豊かではありません。ですから、EUの競争力を高めていくという点では、CEの推進は理に適っていると思います。第一歩としては高く評価しています。

 伝統的なバリューチェーンにおける廃棄物の削減という点では非常にいい対策になっているといえるでしょう。廃棄物のリサイクルや廃棄量の削減について具体的な数値目標を掲げていますから、企業にも対応が求められます。

 ただ、まだ不十分なところがあるのも事実です。これまでお話してきたデジタル技術を活用し、資源と価値創造を切り離した新しいビジネスモデルをサポートし、加速するというところまではフォローされていません。今後の進捗状況に合わせて行動計画や指令が改正され、より有効な施策になることを期待しています。

【参考資料】無駄を富に変える:サーキュラー・エコノミーで競争優位性を確立する

(構成/河合起季 撮影/宇佐見利明)