特区だから実現した自動運転タクシーの実証実験

――「さがみロボット産業特区」が基礎研究ではなく、実証実験に重点を置いた理由は何だったのですか。

 特区というのは、言い換えれば一国二制度のようなものであるはずです。ところが、日本の特区はそうなっていない。中国を見たときに、経済特区をつくって、それがいつの間にか中国全体を経済大国に押し上げました。政治体制は変わっていないにもかかわらずです。あれが特区です。あれぐらいダイナミックにやらないといけないのに、日本の特区は「名ばかり特区」であることが多い。

 さがみロボット産業特区も、特区と認められて具体的な交渉を始めたとき、一つひとつの規制に対して、官公庁の担当部局に要望を出したところ、最初に返ってきたのは全部バツという回答でした。冗談じゃないと怒鳴り込みに行きましたよ。「名ばかり特区を繰り返しているから、日本は変わらないのではないか」と。そしたら2回目の交渉では全部マルになって返ってきました(笑)。霞が関の構造を崩していかない限り、特区なんて機能しないわけです。

 実証実験という発想も、変化の速い世のなかではスピード感が必要だと考えたからです。学術の世界でも縦割り構造が根強く残り、ロボットの研究は理工系の研究者が、医療分野は医学系の研究者がそれぞれの研究室にこもって研究が行われています。製品化に焦点を当てれば、医工連携が進むだろうし、使い勝手をよくするための実証実験も活発になるでしょう。

――具体的には、どのような成果が生まれていますか。

 直近では、藤沢市で自動運転タクシーの実証実験を行いました。これは本当の街のなかを走らせたものです。ドライバーは乗っていますが、いざというとき以外はハンドルから手は放しています。実際に住民がモニターとして利用したのですが、事故や目立ったトラブルもなく終わったことは非常に大きな成果です。

 目指していくのは完全な自動運転です。ドライバーが乗っていなくても、目的地まで自動で運んでいってくれるようなシステムです。これが実現すると、人生100歳時代を迎えたとしても、お年寄りが気軽に自宅前まで自動運転車を呼んで、買い物に出かけて帰ってくることも可能です。超高齢社会において自動運転システムは非常に重要なサポーターになることでしょう。