では、どうすれば女性の経営幹部を増やせるのだろうか。

 調査で明らかになったのは、女性の活躍を後押しするにあたり、幹部職への道筋だけでなく、組織の体質から見直す必要があるということだ。分析では、女性の社内での成功と相関する基本的な要素として、数学での高得点、経営学に関連する学位の専攻、自由な育児休暇制度(父親の育児休暇を含む)などが判明している。また、女性幹部に対する差別的な態度が相対的に少ないことも関係している。

 ノルウェーなど一部の国では、女性の活躍を後押しするために、企業の取締役会に一定の女性比率を義務づけるクォータ制(割り当て制)を導入している。ただ、この制度が及ぼす影響の是非について、我々は確たる裏付けが取れていない(統計的分析はそれを判断するには不十分かもしれない)。

 しかし我々の調査では、取締役会における女性の存在と、最高経営陣における女性の数には統計的に相関があることが示されている。もしも女性取締役の存在が、より多くの女性を励まし上級幹部職へと向かわせる「パイプライン効果」を果たすならば、クォータ制は一考に値するだろう。経営陣の性別の多様性向上が企業業績に影響を与えることを考えれば、なおさらだ。

 クォータ制には批判の声もある。女性の取締役起用を強制すると、経験や能力の足りない分不相応な人が抜擢され、取締役会の質や有効性が下がるという言い分だ(これは「ゴールデンスカート」と呼ばれる。ごく少数の女性が数合わせのために複数の取締役を兼任することを揶揄した言葉)。

 だが、この制度が及ぼしうる悪影響を軽減できる対策もある。たとえばオランダは、2013年から2015年にかけてクォータ制を時限的に導入した。その背景にあった狙いは、この期間を利用して女性が経験とネットワークを築き、後進のためのトレーニング制度を整え、(すでに活躍中の)女性経営リーダーたちと接する機会を増やせるよう、支援することだ。こうした基盤を築く期間を十分に設け、リーダー候補の女性たちが経営幹部を目指せる準備が整えば、その後クォータ制を撤廃してもよいかもしれない。

 クォータ制のような仕組みを推進する立法者にとって、公開企業の取締役会はその格好の対象である。しかし我々の調査が示唆するところでは、女性取締役の増加に直接取り組むよりも、キャリア構築の途上にある女性をサポートする政策のほうが効果的だ。真の経済効果は、最高経営陣における性別の多様性を高めることでこそ得られるものだからである。

 また、社内での女性のキャリアアップを、より幅広い形で促進できる政策も考えられる。女子学生への教育の向上、充実した子育て支援策、女性差別がまかり通っている国々での厳格な差別禁止法の導入などだ。これらは強制による多様性の実現よりも、より大きな効果と持続性を期待できるはずである。


HBR.ORG原文:Study: Firms with More Women in the C-Suite Are More Profitable February 08, 2016

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マーカス・ノーランド(Marcus Noland)
ピーターソン国際経済研究所の副理事長兼研究ディレクター。イーストウエスト・センターの非常勤シニアフェローも務める。

タイラー・モラン(Tyler Moran)
ピーターソン国際経済研究所のリサーチアナリスト。