笑いと静寂の繰り返し

 ワークショップの最初を飾る「鑑賞ワーク」から。鑑賞ワークは、ホワイトシップのアーティスト谷澤邦彦(kuni)さんの作品を見て抱いたイメージを挙げていくのですが、吉田会長の天真爛漫な言動に、場はすっかり和み「吉田ワールド」が広がりました。

 ワークショップは「鑑賞ワーク」が終わると、いよいよ「創作」へ。描く絵のテーマは「働くうえで大切にしていること」。イメージを膨らませるのに苦労している様子の3人。さすがに、このときばかりは吉田会長も天を仰いでいます。吉田会長はスーツの上着を脱ぎ、3人の社員の方は作業着を腕まくりしました。いよいよ本格的に「描く」時間がスタートします。

 吉田会長がつくったリラックスムードは一変します。無言で集中するみなさんの顔からは、不安そうな表情はなくなっていました。

 しかし、それも長くは続きませんでした。15分ほど経過したころ、吉田会長が突然立ち上がり、周囲を歩き回ります。いったい何を始めるのでしょうか。

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吉田会長と谷澤邦彦(kuni)さん

「いや、ドリンクタイムだよ」

 会場の隅に置かれた水を口に含み、ぶつぶつとつぶやいています。

「これから、どう展開するかなあ」

 ほかの3人の絵を見て、小声で言います。

「なるほど、そう来たか」

 ご自分の絵と比較でもしたのでしょうか。

「あまり単純すぎるのもなあ」

 この間も、3人の社員のみなさんは決して動じることなく、黙々と描き続けています。濱崎さんは表情ひとつ変えることなく、道休さんと見角さんはときおり柔和な笑みを浮かべながらも、手を止めることはありません。

 また無言の集中の時間が続き、さらに15分ほど経過したころだったでしょうか。吉田会長の手が止まったのを見た長谷部さんが、パステルを画用紙に定着させるためのスプレーを吹きかけてはどうでしょうかと声をかけます。長谷部さんとしては、いったん色を落ち着かせてから、もうひと踏んばりしてくださいと促すつもりだったと思います。

 しかし吉田さんの表情は「もうできたもんね」という様子です。Kuniさんも「もっとちょっと描いてくださいよ」とダメを押します。

「う~ん、じゃあ、やってみるかなあ」

 吉田会長は、再び手を動かし始めました。