適切な問いを立てる

「エッジ戦略」の目標は、自社の基盤を成している資産を収益化するための、新しく有益な方法を見出すことである。その方法は、中核事業の先に近接する、最も優位が潜む(そして重要なことだが、最もリスクが少ない)領域の製品・サービスに目を向けることだ。価値ある試みの多くがそうであるように、まずどこから始めればよいかを知ることが課題となる。

 中核事業に専念する企業はしばしば、「自社は何が最も得意だろうか」と自問する。これはもちろん重要な問いだが、危険でもある。それによって内向き志向になりすぎ、自社のコンピタンスにばかり気をとられ、顧客にしっかり集中できなくなる可能性があるのだ。

 エッジでの商機を見つけるには、一見するとごく単純に思える次の問いから始めることをお勧めしたい。

●自社のさまざまに異なる顧客は、何を欲して(または必要として)いるだろうか?

●自社のソリューションには、何を含めることが可能または必須だろうか?

●自社の資産のうち、他者にとっても価値があるものはどれだろうか? その理由は何か?

 この思考の枠組みは、ニーズに基づく(外から内への)ものではなく、コンピタンスに基づく(内から外への)ものだ。このほうが、より自然な形で顧客に焦点を当てられる(どんな利益拡大策においても、顧客志向はカギとなる)。探索を始めるうえで、最も見晴らしの効く立脚点となるのだ。

 この3つの問いに従って、先述した「ビジネスの移行帯」の文脈をふまえながら事業を見直してみよう。すると目指すべき方向性が自然に改まり、移行帯に対応する3つの商機が明らかになる。我々はこれらを「製品のエッジ」「カスタマージャーニーにおけるエッジ」「企業のエッジ」と呼ぶ。

1.製品のエッジ

 これは最も一般的に見られるもので、製品・サービスが顧客のニーズに対して十分に調整されていない場合に生じる。製品のエッジにおいて商機となるのは、特定の顧客層が求める全体的な要求をより効果的に満たすために、提供するものを増やしたり減らしたりすることだ。拡張機能や補完的サービスがその例である。基本オファーを延長/強化/変更できるオプションなどもこれに該当する。こうした戦略によって、顧客1人ひとりのニーズに合わせ、中核製品・サービスをより優れた構成にできる。

2.カスタマージャーニーにおけるエッジ

 これは、顧客の最終的な目標にもっと寄り添うことで、自社と顧客の関係性を新たにするという方法だ。顧客はジャーニー(旅、一連のプロセス)、つまり何かをやり遂げようとするミッションの途上にあると考えることができる。このエッジでの商機は、カスタマージャーニーへの自社の関わり方を見直し、主要取引のすぐ前または後に生じるニーズにまで対応すべく、ソリューションの幅を広げることで生まれる。

 たとえば薄型テレビを購入する顧客は、それを箱から出し、組み立てて設置し、設定を入力しなければならない。そこで、製品を取り巻くサービスのオプション、つまり「自分でやってください」を「代わりにやらせてください」に変えるものであれば何でも、カスタマージャーニーにおけるエッジとなる。

3.企業のエッジ

 これは見つけるのが最も難しい。本来は中核事業を支えるために築かれた自社の基盤的資産を、当時には予期していなかった形で再活用するということだ。資産群のどこかに、気づいていなかった価値が埋もれているかもしれない。他のエッジと同様、資産はすでに自社に存在する。つまり条件さえ整えば、意図していなかった他用途でのニーズを満たすために必要なことが、かなり実現できるのだ。

 先述のトヨタの事例で示したように、データはこのわかりやすい例である。企業は中核事業を運営する過程で、図らずも他社にとって有益となるような、豊かなデータを集めていることがままある。そのため、データを他の状況・文脈に援用してその価値を収益化するうえで、追加的な投資で済むことも多い。

 エッジにおける商機はあちこちに遍在するが、企業はそれらを最大化していないと我々は考えている。それはおそらく、エッジがもたらす効力を十分に認識できていないからだと思われる。

 優先事項を正しく決めず、注意を適切に働かせないまま、これらのチャンスを偶然見つけることは難しい。エッジを見極めるには、パターンを見抜くこと、そして適切な問いを立てることが必須だ。周辺視野のような目をもって、自社、その資産、製品・サービスをこれまでとは違う視点で見ることが求められる。

 我々が見てきた多くの企業は、この特別な視点と問いを「エッジ思考」へと発展させることを学んでいる。これこそ、成長への大きなチャンスにつながる真に新しい戦略思考なのだ。


※本記事は、Edge Strategy: A New Mindset for Profitable Growth(ハーバード・ビジネス・レビュー・プレス刊)からの抜粋である。

HBR.ORG原文:When Opportunity Resides Along the Edges February 01, 2016

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アラン・ルイス(Alan Lewis)
L.E.K.コンサルティング ボストンオフィスのマネージング・ディレクター兼パートナー。共著書にEdge Strategy: A New Mindset for Profitable Growth(HBR Press, 2016)がある。

ダン・マコーン(Dan McKone)
L.E.K.コンサルティングのマネージング・ディレクター兼パートナー。同社のグローバル・リーダーシップ・チームのメンバーでもある。共著書にEdge Strategy: A New Mindset for Profitable Growth(HBR Press, 2016)がある。