3.業界を熟知している

 卓越した経営幹部は、自社が属する競争環境の絶え間ない変化を常にしっかり把握している。換言すると、彼らは「コンテキスト読解力」、つまり状況・文脈を読み解く能力をごく自然に備えており、それは次の2点に関する洞察の上に成り立っている。自社独自の方法で競争し儲けるにはどうすればよいか、そして顧客にとって何が最適なのか(たとえ顧客自身が気づいていなくても)である。

 来たる競争上の脅威に対し、ビジネスの実践知(経験から得られる暗黙知)を活用するためには、今後のトレンドと新たな可能性を数年という時間軸で読む能力が問われる。リーダーは、相反する投資の選択肢に悩まされたり、収益の減少に茫然としたままでいたりすることがあまりにも多い。市場に価値を提供する方法を理解していないと、最適な投資ができない。さらによく見られるのは、反射的に全社一括のコスト削減を行うせいで、変化を続ける競争環境でうまく立ち回る力が削がれてしまうことだ。

 業界の変化を読み対応する能力に秀でたリーダーは、みずからが置かれたビジネス環境についての深い知識と生来の好奇心を兼ね備え、それらをより広範な経済・技術・顧客のトレンド理解に活用している。こうした模範的リーダーは明確な視点を持っており、脅威に素早く対処し、他に先んじてチャンスを捕らえる。文脈を読み解く手段として、自社を取り巻く外部の現実に身を置き、周辺業界への興味を絶やさず、自社の一般的なイメージに反するデータを求める。

4.濃密で信頼に満ちた関係を築く

 どの会社にも、誰もがこの人のために働きたいと思う経営幹部がいるものだ。そうした幹部は、上司や同僚、部下と濃密な関係を築き、重要なステークホルダーのニーズをくみ取り、それに応える。説得力あふれるコミュニケーションと、表面的ではないやり取りを通じて、互恵的で信頼に満ちた関係を築くのだ。その財産が社内での良い評判につながる。常に結果を出し、それに貢献した社員を心から大切にする人だと称えられる。

 意外ではないが、二流の経営幹部の間では、これまで述べた4つの側面の中でも、人間関係の失敗が退任への最短距離になっていた。卓越した幹部は謙虚な自信家であり、部下に思いやりをもって接する。かたや二流の幹部は、印象操作をする傾向があり、利己的な動機を隠しつつ協調的な姿勢を装うことがある。超一流の幹部は、みずからの心の知能指数や社会的知性を努力して高めることによって人間関係を築き、周囲にそれをどう受け止めているか積極的にフィードバックを求める。そして自身の欠点を受け入れる姿勢を身につけることで、他者の信頼を獲得する。

 経営上層部における人間関係の重要性に関しては、さまざまな調査が行われている。ある調査によると、次の3つの恐れが経営陣の人間関係を損ねて悪しき行動を招いている、と回答した経営幹部は60%に上った。無能と見られこと、成果を上げていないと思われること、ライバルから政治的な攻撃を受けること、への恐れである(英語記事)。別の調査も、我々の結論を裏付ける。幹部継承が奏功せずに終わる確率は高いが、その原因として人間関係の失敗が特に高い割合を占めているという(英語報告書)。

 上記4つの特質は学習可能であり、これらの能力開発をいつ始めても早すぎるということはない。いま幹部職にある人は、4つのうちどの側面で特に強みを発揮できるのか、どれが自分の足かせとなっているかを考えてみるとよい。すると、これら4つは互いに強く相関していることがすぐにわかるだろう。自社の事業をより深く理解するには、他部門の人々と関係を築く必要があるかもしれない。より的確な投資判断をするには、自業界の変化の文脈についてもっと学ぶ必要があるかもしれない。

 まずは4つのうち1つ、自分の成功に大きくプラスとなりそうなものを選んで取り組みを始めてみよう。驚くほどすぐに、自他ともに変化に気づくはずだ。


HBR.ORG原文:A 10-Year Study Reveals What Great Executives Know and Do January 19, 2016

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ロン・カルッチ(Ron Carucci)
ナバレントの共同創設者、マネージングパートナー。組織、リーダー、業界の変革を目指す企業のCEOと幹部を支援する。著書に最新刊Rising to Power: The Journey of Exceptional Executives(Greenleaf Book Group Press, 2014)を含む8冊があり、どれもベストセラーとなっている。