1.ビジネス「全体」を把握している

 卓越した経営幹部は、自社の各部分が互いにどうフィットしながら価値や成果を生み出すのかを熟知している。

 たいていのリーダーは、マーケティングや財務といった特定の部門で経験を積んでから経営陣に加わるので、特定分野で昇進する中で身につけた直感や認知的バイアスに大きく依存する。そのため、多角化企業の一事業部を率いるリーダーは、ポートフォリオ全体の中で自身の事業を重視しがちだ。しかし卓越した幹部は決してそうした行動を取らず、組織全体が密接に連携して動くようにまとめ上げる。彼らは組織横断的に経験を積み、さまざまな職能の仕事に携って守備範囲を広げている。

 卓越した幹部はまた、社内の「継ぎ目」、つまり部門間の連携を強化する。それによって協調不足や断絶を最小化し、自社に最大限の競争力と差別性を発揮させる。

1つ例を紹介しよう。あるクライアント企業は何年にもわたり、顧客満足度の目標を達成できずに悩んでいた。満足度の比較ランキングでは、常に下位または最下位。四半期予測がふたたび未達となった時、販売部門は価格の問題を解決すべくコストを削減し、顧客マーケティング部門はコンテンツの改善に励んだ。そして、サプライチェーン部門は土壇場の変更に対応できる態勢をつくった。ところが各部門の取り組みは、意図は正しくてもバラバラであったため、商品が店頭に並んでも顧客満足度はまったく向上しなかった。

 そこでR&D部門のリーダーが、問題を体系的に解決するために全部門のリーダーを集めた。皆で顔を突き合わせ、顧客の期待に応えるために一丸となるべき部門の間に根強く潜んでいた、連携不足と優先事項の不一致という問題を明らかにした。その翌年、同社の顧客満足度は40%も向上した。

2.意思決定者として優れている

 模範的な経営幹部は次のことに秀でている。みずからのビジョンを明確に示し、他者の意見に耳を傾け、データを分析してインサイトを得る。複数の選択肢を秤にかけ、責任を持って最終決断を下し、その決定を明確に伝えることができる。この一連の高い意思決定能力によって、従業員の自信と集中力が喚起されるのだ。

 彼らは意思決定に優れているがゆえに、優先順位の判断にも長けている。優先順位の設定とは、さまざまなトレードオフの中で慎重に選択をすることだ。卓越した幹部は少数の優先事項に集中することで、それらが確実に実行されるよう導くとともに、組織が相反する目標によって混乱に陥るのを防ぐ。さらに、組織に対する説明責任が明確に果たされるよう徹底する。

 優れた意思決定には、直感と分析のバランスを取ることが欠かせない。このバランス軸の一方には、「自分の勘を信じる」タイプのリーダーがいる。彼らは経験と感情を組み合わせ、確かな直感を生み出す。そして軸の反対側にいるリーダーは、目の前の決断事項や問題に取り組む際に、データを徹底的に漁りインサイトを求める。卓越した経営幹部は、この両軸の間を身軽に行ったり来たりしながら、直感に頼りすぎていないか、分析による麻痺を起こしていないかと、みずからの傾向を確認しているのだ。

 優れた意思決定のスキルは、比較的得がたいもののようだ。マッキンゼー・アンド・カンパニーによる経営幹部2207人を対象にした調査では、次のような結果が出ている。自社の戦略的意思決定の質が高いと答えた人はわずか28%。優れた決定と同頻度でお粗末な決定がなされているとした人は60%。残りの12%は、優れた意思決定はめったに行われないと回答した。これは我々の調査結果とも一致している。

 なお、意思決定を誤る傾向は、社内の意思決定システムがお粗末だといっそう助長される。その場合、たとえリーダーの直感が優れていても奏功しにくい。