1.「あなたのことが心配だ」と伝える

 第1に取るべきステップは、問題を起こしている相手の利害に訴えることだ。当人は自分が要求していることの意味合いを認識していない可能性もある。そこで、相手の要求を吟味したうえで、それを「あなたにとっての潜在的なコストや影響」という観点から相手に示し、成り行きを見てみよう。これはまた、こちらの戸惑いを伝えるシグナルになる。そして、相手が面目を失わずに、要求を黙って撤回する余地を与えることにもなる。

2.相手の良心に訴える

 ほとんどの人は、自分が基本的には真っ当な人間であると考えたがる。自分の行為が理想の自己イメージと一致していないと気づいた時の葛藤は、実に嫌なものだ。何が正しく真っ当であるかを強調すれば、相手の葛藤を強めることができる。相手の目論みが愚かであればあるほど有効だ。

3.ただ「ノー」と言う

 上述の1も2も効果がない場合には、静かに拒否するのが最善策だ。倫理や道義、あるいは法律に明らかに差し障る行為を求められたら、真摯に断るだけでも、相手の不安や怯えをあおり撤回と再考を促せる可能性がある。

4.「ノー」の声を大きくする

 3も効果がなければ、他の人を巻き込むことで声を高める段階だ。友人や同僚に相談して、助言やサポートを受けるとよい。それによって彼らを危険にさらすのであれば、組織内部での告発に踏み切る。つまり上司に話すのだ。その上司自身が問題の当事者である場合には、さらに上層部や、社内の監察役、または人事部の誰かに話を持ち込もう。

5.「ノー」の声を拡大する

 1から4の戦術に効果がなければ、外部への告発を検討する時である。これは大きなアクションであり、自分や他者に重大な影響をもたらす可能性が高い。研究によれば、告発が奏功しやすいのは次の3つのケースである。まず、告発者が組織の中で高い信頼を得ており、告発当初から実名を隠さず身元を明かしている時。次に、行われている不正に組織がさほど依存していない時。そして、不正行為の証拠に説得力があり、明らかに違法である時だ。

6.味方を増やす

 もう1つの戦術は、仲間を募って職場での勢力図を変えることである。部内の数人が連れ立って上司に掛け合い、懸念を表明すれば済む場合もあるだろう。あるいはもっと大規模な、ウォルマートのような例もある。労働条件の改善を求めた従業員に対し同社は報復し、これに抗議して12州28店舗で労働デモとストライキが組織された。

7.圧制者自身の基準・規範を逆手に取って、圧制者を追い込む

 米国のコミュニティオーガナイザーであり作家でもあったソウル・アリンスキーは、かつてこう記している。「有力者は公の場で、責任、道徳、法、正義(これらは互いに相容れないことも多いが)の管理人として振る舞っているため、自分自身の道徳観や規則にもしばられることがよくある」

 その例として彼は、差別的な融資慣行に対する住民の抗議行動を挙げている。地域の住民は銀行に大挙して押しかけ列をつくり、1ドルで預金口座を開設して、その口座を解約するためにまた最後尾に並んだ(銀行側は業務規定上、この手続きを拒否できない)。

 これはいまでは「積極的非協力」として知られる。ただしこのような手段は、戦略全体が慎重に策定され実施されない限り、裏目に出る可能性も十分にある。

8.法の力に訴える

 これらすべてが功を奏しない場合には、いよいよ直接的な法的措置に訴える時かもしれない。当然ながら、この戦術は最も費用がかかる。だが、切り札となるBATNA(交渉決裂時の代替策)、つまり万が一すべてが失敗に終わった場合の最善策として、常に用意しておくべきである。

 劇作家ジョージ・バーナード・ショーはかつて、こう記している。「分別のある者は、自分を世界に合わせる。分別のない者は、世界を自分に合わせようとし続ける。したがって、無分別な人間がいなければ進歩はない」

 職場で「分別」を捨てざるを得ない時、合理的かつ秩序立った方法でそれを行うための戦略が、「道義に基づく抵抗」なのだ。


HBR.ORG原文:What to Do If Your Boss Asks You to Break the Rules January 07, 2016

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ピーター・T・コールマン(Peter T. Coleman)
コロンビア大学教授。心理学・教育学を担当。協力と紛争解決を研究するモートン・ドイッチ・インターナショナルセンターのディレクターも務める。ロバート・ファーガソンとの共著にMaking Conflict Work: Harnessing the Power of Disagreement(Houghton Mifflin Harcourt, 2014)がある。

ロバート・ファーガソン(Robert Ferguson)
心理学者。ローリー・コンサルティング・グループの経営コンサルタントおよびエグゼクティブ・コーチ。ピーター・T・コールマンとの共著にMaking Conflict Work: Harnessing the Power of Disagreement(Houghton Mifflin Harcourt, 2014)がある。