我々はまた、大学の友愛会(フラタニティ:男子学生の社交団体)でも実験を行った。この組織では、他のメンバーに対する忠誠心は最も重要なものと見なされる。

 ある実験では、米国西海岸の大規模な大学の3団体、89人の男子学生を対象とした。まず、各メンバーに個別に、友愛会に対してどの程度忠誠心を感じているかを質問した。1週間後に、前述の実験の後半部分を変えたバージョンに参加してもらった。パズルに正解すると、最大20ドルが自分の友愛会に与えられる。さらに、これは他の2つの友愛会との競争で、正解数が最も多かった会には賞金として200ドルが与えられるものとした。

 ここでもやはり、忠誠心はより倫理的な行動を促進した。実際に、友愛会に対する忠誠心が強いと答えた学生のほうが、弱いと答えた学生よりも不正申告の数が少なかったのだ。どうやら忠誠心は、「正しい行いをしたい」という、より一般的な欲求へとつながるように思われる。

 しかし、メディアの報道から示唆されるように、忠誠心が善行よりも悪行の原動力になると思われる状況は確かにある。グループ間での競争意識は、悪行の誘因の1つになることが、我々の別の実験で示された。

 米国の大規模な大学の4つの友愛会120人の男子学生に、ある競争に参加してもらった。各参加者は、友愛会の会長からメッセージを受け取る。その記述には2種類ある。1つは、「この任務を真剣に受け止めるように。幸運を祈る!」のみ。もう1つは、奮起を促すはるかに長文のメッセージだ。特に、他の友愛会との競争について言及され、「厳しい競争になるが、我々は必ず勝つはずだ」とある。我々はここでも、友愛会に対する各自の忠誠心を尋ね調べた。

 実験の結果、1つ目のメッセージ(「この任務を真剣に受け止めるように」)を受け取った学生に関しては、これまでと同様の結果が示された。友愛会への忠誠心が強い学生の不正率は、忠誠心が弱い学生のほぼ半分であった(23%対55%)。ところが、奮起を促すメッセージを受け取ったグループでは、結果は逆転したのである。忠誠心が強い学生の不正率は66%だったが、忠誠心が弱い学生のほうは42%に留まった。

 我々の研究が示したように、忠誠心は善い行いの誘因となりうるが、グループ間の競争が激しい場合には、非倫理的な行動を招く可能性がある。忠誠心の強いメンバーから成るグループに属している人は、公正、正直さ、誠実さといった、忠誠心に関連する特性への意識が非常に顕著になる。しかし、「他のグループと競争して何が何でも勝つ」といった目標が忠誠心とつながる時には、倫理的に行動することの重要性は低くなるのだ。

 つまり、マネジャーは従業員の忠誠心を善いことのために利用できるが、グループ単位で働く人たちに対しては、目標を丁寧に設定する必要がある。タスク面の目標に焦点を当てるだけではなく、正直さや誠実さといった、優先すべきより高い次元の原則をも強調しなければならない。

 マネジャーはまた、組織内の作業グループ間で競争を促す際の方法についても、熟慮するべきである。勝つことの重要性ばかり強調すると、グループのリーダーやメンバーは、より大きな目標(たとえば正直であること)を見失うかもしれない。そうなれば、グループに対する忠誠心は、倫理の境界線を越える理由になりかねないのだ。


HBR.ORG原文:If You’re Loyal to a Group, Does It Compromise Your Ethics? January 06, 2016

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フランチェスカ・ジーノ(Francesca Gino)
ハーバード・ビジネススクール教授。経営管理論を担当。ハーバード・ケネディ・スクールの行動インサイトグループのメンバーも務める。著書に『失敗は「そこ」からはじまる』(ダイヤモンド社)がある。