企業とビジネススクールの新しい関係へ

――EMIとの連携に興味を示す企業や人には、どのような特徴がありますか。

 相手によってさまざまです。我々は多くのカンファレンスをキャンパス内外で開いています。ビジネス界からは、新興国でのビジネスに関する研究と、そこからの示唆に非常に興味を持たれます。一方で、新興国の政府関係者も多く参加します。彼らは、組織の効率性をどう高めていくかに強い興味を持っています。新興国の国有企業や公的機関も、生産性を高めるために最新のビジネス思考を活用することに興味を持ち始めているのです。

 彼らは、共通の課題を抱えています。いかに優秀な人材を獲得し、育て、キープするか。そしてどうすればそうした人材の生産性を高めることができるか。ステークホルダーが求める成果をいかに出すか。こうしたテーマに興味が収斂します。

――日本企業をはじめ、先進国企業はどう反応しているのですか。

 先進国企業も関心は強く、研究協力や提携の話は少なくありません。相手先の事情もあり、具体名は出せないのですが。

――企業にとって、新興国ビジネスの研究機関との協力にはどのようなメリットがあるのですか。

 複数あります。第一に、自らの取り組みを知識として形に落とすことで、組織の中に普及させることができます。たとえば我々と協力して、アジア事業の課題に関する社内事例研究をすれば、我々はそれをケーススタディに落としこみ、企業は世界中のオフィスでそれを活用することができます。どういう問題があり、どう対処し、何がうまく機能して、何が失敗となり、結果として何を学んだか。ビジネススクールと連携する価値の一つは、知識をコード化する方法を学べることです。そうすれば、単にマネジャー同士がグローバル会議で立ち話をするより、はるかにうまく知識を普及させることができます。

 第二に、我々のカンファレンスやプログラムに参加することで、他の組織の参加者がどう考えるのか、新しい視点を得ることができます。同じ問題を議論しても、想像以上に答えにはバラつきがあるものです。企業にとって、こうした新しい発見もきわめて有用です。

 そして最後に、ビジネススクールを介してネットワーキングの機会を作ることができます。たとえばINSEADのような場には、世界中から多様な人が集まるので、こうした人脈作りもとても貴重な機会になり得ます。

――なるほど。最後に、ビジネススクールとして、新興国ビジネスとの関わりについて5年か10年後にどのような将来ビジョンを持っていますか。

 我々のビジョンは、シンプルです。新興国市場に携わり、その知識を求めるあらゆる企業にとって、「何よりまずそこに行くべき」という場になることです。そのようなハブとなることがビジネススクールとしての競争力に重要です。

――ビジネススクールにとっても、新興国とEMNCの台頭に、本気でどう向き合うかが問われているのですね。本日はどうも有難うございました。

 
パディー・パドマナバント
Paddy Padmanabhan
INSEAD教授(マーケティング)

INSEADの新興国研究機関Emerging Markets Instituteのアカデミックディレクター。過去にはワシントン大学、スタンフォード大学のビジネススクールで教鞭をとる。ノースウエスタン大学ケロッグビジネススクール客員教授。アジア国際経営幹部育成プログラム、上級経営幹部向けリーダーシッププログラム(インド)などを統括する。現在は、新興国のビジネス機会とチャレンジ、経済危機とその影響、プライシングとサプライチェーンマネジメントに関する研究に従事する。経済学と経営学の領域で、最も論文を引用されるトップ250人の研究者に含まれる。主著論文は過去50年(1954-2004年)に出版された経営科学の論文で最も影響力ある10論文の一つに選ばれた。ヒューレット・パッカード、ノキア、シンジェンタ、コカ・コーラ、ルフトハンザ、モンサント等の多国籍企業からスタートアップ企業まで、アジア・北米・南米・欧州の幅広い企業にコンサルティングや研修などで関与した経験を持つ。