2003年には、東証は上場企業に対して決算短信に「コーポレートガバナンス(CG)に関する基本的な考え方及びその施策の実施状況」の記載を求める(2006年に「CGに関する報告書」として独立した開示)。また、2005年には新会社法が制定され、取締役解任を特別決議から普通決議にすると同時に、社外役員に関する情報開示を義務づけた。2006年には、金融商品取引法が成立し、内部統制に関する経営者報告の提出が義務付けられた。2009年に経済産業省の「企業統治研究会」から報告書が出されるなど、ガバナンスを議論する場がいろいろと設けられた。

 しかし、一方で2000年代後半は、ライブドア事件や村上ファンド事件がもたらした株主重視的発想への反発(揺り戻し)により、株式持合が増加し、買収防衛策導入企業も増加した時期であった。この頃、株主総会でアクティビストファンドの株主提案が増加した。

 2010年代に入り、世界では金融危機を経て、金融機関の経営や報酬についての議論がなされる。同時に、格付け機関、会計監査人、機関投資家の責任など、企業の外にいる第三者に対しての統制が議論されるようになる。日本でも2010年に東証が独立役員届出制度を始めた。

 そして、最近の経緯を振り返ると、会社法の改正とともに、2014年には機関投資家向け日本版スチュアードシップコードが策定され、2015年には上場企業向けにコーポレートガバナンス・コードが策定された。さらに、日本再興戦略改訂2015を受けて、金融庁と東京証券取引所を事務局とするフォローアップ会議が設置され、2016年現在定着状況を議論中だ。

 コーポレートガバナンス・コードは、OECDコーポレートガバナンス原則を参考に、実現すべき普遍的な理念や目標を示したものだ。株主の権利・平等性の確保、マルチステークホルダーとの適切な協働、透明性の確保、取締役会等の責務、株主との対話を基本5原則としてあげている。

 こうした一般的な「原則」に各企業がどう対応するのかは、自主性に任されているのが重要な点だ。原則から離れても、ルール違反として断罪されるわけではなく、その理由を説明すればよい(Comply or Explain)。各企業の自由と創意工夫を尊重していることの表れだ。これは日本のルールの中でも新しいアプローチだろう。

 欧州・米国ではすでに取締役会は社外が大半であり、形式の議論は終わっている。これに対して、日本では2015年になり、2名の社外取締役導入の是非が大きな議論を呼んでいる状態だ。世界の趨勢から見ればかなりギャップがあることは否めないだろう。筆者が重視する「ギャップ」とは必ずしも「何人社外が必要か」と言った形式的な差ではない。何のためにガバナンスを議論するかと言う実質面でのギャップである。

 このような歴史を踏まえながら、2回以降具体的なガバナンスの課題を考えていきたい。
 

※次回は4/5(火)公開予定