日本の企業統治改革の小史

 コーポレート・ガバナンスは各国共通の問題である。ただ、各国それぞれに制度も歴史も違う中で、画一的なモデルが必ずしも合理的でないとすると、機関投資家などのグローバルロジックに対して説得力を持てるか、がポイントでもある。「国際的に遜色ない水準の企業統治とは何か」を求めながら、日本のコーポレート・ガバナンスは、大体10年から20年程度の間をおいて、欧米の後を追っているように見える。

 イギリスでは、1980年代に独立取締役の重要性が認識されるようになった。1992年にコーポレート・ガバナンス論の先駆けであるキャドベリー報告書が出され、Code of Best Practice(行動基準)の制定、独立取締役の強化、Comply or Explain(ルールに従う、そうでなければ、その理由を説明する)原則などが採用された。この頃から、欧州、米国では、取締役会構成の改革、社外取締役による監視強化、機関投資家の関与など、「外からのガバナンス」の強化が議論された。1999年には、各国のその後の範となるOECDコーポレートガバナンス原則が策定された。

 日本の90年代は、不良債権問題、損失補填問題、総会屋事件などを背景に、漸進的に企業統治への関心が高まりを見た。1993年には商法改正による監査役強化・社外監査役の導入が図られ、株主代表訴訟が容易になり、実際にも大和銀行NY支店巨額損失事件で代表訴訟が提起された。1997年にはソニーが取締役改革をおこない、執行役員制が導入され、取締役数の大幅削減がおこなわれた。

 日本の他の先進企業でもこの頃からコーポレート・ガバナンスを意識した体制整備がおこなわれている。ただし、社外取締役をおく会社はまだ少なかったし、日本に特殊な形態である監査役設置会社における監査役の役割が、海外、特にアングロサクソン的投資家には理解されにくいという問題も存在した。(当初、監査役の英文呼称はローマ字表記のKANSAYAKUとした上で、Statutory Auditorを補足説明としていたが、国際的な理解を改善させることを意図して、2012年にAudit & Supervisory Board Memberという名称を日本監査役協会が推奨した)。

引き続き存在する海外との「ギャップ」

 2000年代に入り、アメリカでは前述のようにエンロン、ワールドコムの会計不祥事とそれに続く経営破綻等から2002年にサーベンス・オクスリー法(企業改革法、SOX法)ができ、内部統制が強化された。

 欧州では2004年に欧州会社法が制定される。日本では2002年に委員会等設置会社を認める新型ガバナンスが導入された。これは監査役設置会社との選択制であり、指名・監査・報酬委員会に大きな権限を与えるものである。監査役機能の強化もなされ、社外監査役を半数以上とする一方、社外取締役の認知が広がり、責任限定もなされる。日本では2000年代前半に「外からのガバナンス」の体制が整備され、後半には「内なるガバナンス」(内部統制)も議論されるようになったといえる。