それに加え、不祥事の問題がある。どの国にも不祥事は存在するのだが、たとえば米国においては、2002年のエンロン、ワールドコムの会計不祥事のあと、サーベンス・オクスリー法(企業改革法、SOX法)ができ、その後は大規模な会計操作的な事件は起きていない。ところが、日本においては、カネボウ、オリンパス、昨年は東芝と相変わらず不祥事が続いている。海外投資家などから見て日本企業の意思決定メカニズムがわかりにくい、透明性を高めてほしいという要請がある。「Opaque=不透明な」は日本の企業社会を表す言葉として使われて久しい。日本企業にガバナンス実質化を求める動きは潮流として底堅いものがあると言える。

政府も求める「攻めのガバナンス」

 日本においてコーポレート・ガバナンスの「実質化」の動きが強まったのは投資家・株主だけでなく、政府が企業のコーポレート・ガバナンス強化に強い関心を持ち始めたことも背景にある。

 我が国は大きな財政赤字をかかえ、人口が高齢化している。日本の人口構成を考えると、少ないインプットでいかにアウトプットをあげるかが至上命令になりつつある。なぜならば、2020年前半までは団塊ジュニアが生産性のピークとなる40歳代を迎え現状より生産性が上昇する(全要素生産性は平均年齢45.8をピークに山形を描くとされる)。しかし2020年代後半以降に人口動態の生産性への影響はマイナスに転じる。それまでに技術革新力・労働生産性を高めないと経済が凋落する危険は明らかだ。同一労働同一賃金を実現する労働市場改革などの政策とともに、企業内の生産性をいかにあげるのかは最重要課題である。

 企業活動が活性化し、法人税収が増え、働く人の賃金が上がって所得が増えることが経済運営の根幹をなす。そのためには、不祥事を防ぐといった「守りのガバナンス」だけでなく、企業が統治力を高め、より長期的に収益を生む体質となる「攻めのガバナンス」が求められている。