企業文化はパフォーマンスをどう左右するのか

 我々はこれまで、世界各地の就労者2万人余りにアンケート調査を行い、50社に及ぶ大企業を分析し、数多くの実験を行い、広範な分野の学術研究を精査してきた。そしてある結論にたどり着いた。「仕事のパフォーマンスは、その仕事をする動機に左右される」ということだ。

 2013年に行われたある実験が、この点を的確に示している。研究者らは、約2500人の被験者(アマゾンの人材プラットフォームであるメカニカルタークの登録者)を対象に、医療用画像の分析作業を依頼した(英語論文)。あるグループには、分析対象を「関心対象物」という表記で示し、分析結果は最終的に破棄されると伝えた。別のグループには、分析対象は「がん性腫瘍細胞」だと告げた(作業はがんの研究者を助けるものであることも伝えた)。被験者は分析した画像の枚数に応じて報酬を得る。

 すると後者、「意義」条件のグループは、より長い時間をかけて各画像を吟味し、前者の「破棄」条件のグループに比べて報酬は平均10%低かった。しかし分析の質は、後者のほうが高かった。つまり、被験者に意義を与えることが、パフォーマンスの向上につながったのである。

 働く動機については、大勢の研究者が1世紀近くにわたり研究を重ねてきたが、1980年代に飛躍的な進歩が見られた。ロチェスター大学のエドワード・デシとリチャード・ライアンが、人間の働く動機を6つのカテゴリーに大別したのだ。我々はその枠組みを活用し、現代の職場環境に当てはめてみた。人間が働く6つの主な理由とは、「楽しみ」「意義」「可能性」「感情的圧力」「経済的圧力」「惰性」である。

 多くの研究により、最初の3つの動機はパフォーマンスを向上させ、残りの3つの動機は低減させることが明らかになっている。サウスウエスト航空やトレーダージョーズ(オーガニック製品のスーパー)など卓越した文化で知られる企業は、前者3つの好ましい動機を最大化し、そうでない3つの動機を最小化している。

●楽しみ(play)が動機の人は、その仕事自体が楽しいから働いている。これを動機とする教師ならば、教育・指導の核となる諸活動を楽しんでいる。指導計画の立案、テストの採点、1人ひとりの生徒と絆をつくる方法の検討などだ。楽しみとは学習本能であり、好奇心、実験精神、難題への挑戦意欲と関わりがある。

●意義(purpose)が動機の人は、仕事の直接的な成果と自分のアイデンティティが一致している。働く理由は、その仕事が生むインパクト(社会的貢献)に価値を感じるからだ。たとえば意義に衝き動かされている教師は、子供を教育して力を与えるという目標に価値を感じ、自身を捧げる。

●可能性(potential)が動機の人は、仕事の成果が自分にプラスとなる、換言すると、仕事によってみずからのポテンシャルを高めるために働いている。可能性を動機とする教師は、いつの日か校長になりたくてその仕事をしているのかもしれない。

 上記3つの動機は、何らかの形で仕事内容と直接関わりがあるため、「直接的な動機」といえる。これらは多かれ少なかれ、パフォーマンスのレベルを引き上げる。しかし、以下の「間接的な動機」はパフォーマンスを損ねる傾向にある。

●感情的圧力(emotional pressure)が動機の人は、外部からの力によってアイデンティティが脅かされているために働く。大切な人に対し、その罪悪感につけ込んで何かを無理強いしたことはないだろうか。それが、感情的な圧力を与えるということだ。恐怖、同調圧力、恥などは、いずれも感情的圧力の一種である。「自分自身や他者の期待を裏切らないため」に何かをする時は、感情的圧力に動かされている。これは、仕事内容とまったく関係ない動機である。

●経済的圧力(economic pressure)も、外発的な要因である。報酬を得る、または処罰を逃れるために働く場合だ。仕事内容にも自身のアイデンティティにも結びつかない動機である。

●惰性(inertia)で働いている人は、動機が仕事内容および自身のアイデンティティと完全に乖離しており、働いている理由さえもわからない。「なぜいまの仕事をしているのですか」と尋ねて、「さあね、昨日もその前もやっていたからだよ」という答えが返ってきたら、まさに惰性の証しだ。それでも仕事を続けているのだから、惰性も動機の1つではある。しかしそうする理由が説明できないのだ。

 こうした間接的な動機で働く場合、もはや仕事の内容そのものについては考えていないため、パフォーマンスも低下しがちだ。誰かを失望させてしまわないか、どれだけ報酬を得られるか、そもそもなぜこんな仕事をやっているのか、などとばかり考えるようになる。したがって注意散漫となり、仕事の内容やパフォーマンスの質など気に留めなくなってしまう。

 我々の研究によると、高いパフォーマンスを促し実現する企業文化は、従業員の感じる楽しみ、意義、可能性を最大化する一方、感情的圧力、経済的圧力、惰性を最小化している。我々はこれを「トータルモチベーション(ToMo)の創出」と呼ぶ。

 ハーバード・ビジネススクールのテレサ・アマビールによる実験を例に挙げよう(英語論文)。創作文が得意だという人たちを集めて被験者とし、「笑うこと」というテーマで簡潔な詩を創作してもらった。書き始める前に、一方のグループには創作をする理由として「楽しみ」に該当する動機のリストを見てもらう(「自己表現の機会を楽しむため」「言葉で遊ぶのが好き」など)。もう一方のグループには、感情的・経済的圧力に該当する動機のリストを見てもらう(「自分の文才で、作文の先生を感心させたい」「小説や詩集が1冊でもベストセラーになれば、経済的安定を得られると聞いた」など)。

 すると、楽しみ(内発的動機)のグループが書いた詩は、圧力(外発的動機)のグループよりも創造性が約26%も高いことが示された。前者の高いトータルモチベーションが、パフォーマンスに影響を与えたのだ。