ここまで挙げたことはそれほど意外ではないかもしれないが、すでに知っているからといって軽視してはならない。これらの条件を実際に満たすことは、やはり難しいのだ。

 イノベーションに影響を及ぼす要因のなかには、それほど明白ではないもの、時に直観と相容れないものもある。以下に3つの例を挙げる。

●創造性を促進するものが、イノベーションの妨げになる場合がある(その逆もありうる)

 イノベーションにおける創造性(第1段階)と第2段階では、それぞれ異なるスキル、チーム構成、プロセスが求められる(英語論文)。アイデア出しの段階はしばしば「拡散的思考」や「探索」と関連づけられる。またアイデアを実施する段階は「収束的思考」や「深化」と見なされる。創造的なアイデアを活かすには、両方のモードを状況に応じて使い分けられるチームをつくる必要がある。

●多様性はプラスにもマイナスにもなりうる

 チームメンバーの多様性を高めれば、創造性とイノベーションが促進されると思われがちだ。しかし諸研究の結果を見ると、一概にそうとは言えない。最近のメタ分析によれば、文化的多様性は創造性を高める反面、タスク・コンフリクト(業務の内容や目標をめぐる対立)を増やすことにもなる。すなわちリソースの分配、手順・方針、事実の解釈などをめぐる意見の不一致である。さらに、チームの結束力低下も見られるという(英語論文)。

 ただし、多様性はチームのパフォーマンスには影響を及ぼさないとする論考もある。別の研究では、複数の職能からメンバーを集め部門横断型のチームを構成しても、イノベーションには大きな違いは生じないという結果が出ている(英語論文)。さらに別の研究によれば、チーム内で多様性のメリットを得るには、メンバー間での視点取得、つまり他者の立場になって考えることが必要であるという(英語論文)。

 このように、文化的多様性は必ずプラスになるわけではないが、マイナスが不可避なわけでもない。多様性のダイナミクスを理解してうまく介入しようという強い意思がリーダーにあれば、マイナスを避けられる。

●対立は、適切なレベルとタイミングであれば創造性に寄与する

 対立は、創造性とイノベーションにおける重要な要因と考えられてきた。しかし研究によれば、この点についても結果はまちまちだ。ある実験では、チームの創造性と対立が曲線関係で示され、タスク・コンフリクトが中程度の時に最も創造性が高くなった(英語論文)。ただしこの関係は、チームのライフサイクルの初期段階に限られ、それ以降は対立と創造性の間に関連は見られなかった。この現象をふまえ、生産的な対立をいかに促すかがリーダーおよびチームにとっての課題となる。

 チームのイノベーション力に関する研究は、いまなお発展途上にある。明らかにされていることも少なからずあるが、まだ多くが研究者による解明を待っている。チームの創造性を最大限に高めるためには、イノベーションへの道はそれほど単純ではないと知ることが必要だ。


HBR.ORG原文:What the Research Tells Us About Team Creativity and Innovation December 15, 2015

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ロジャー・シュワルツ(Roger Schwarz)
ロジャー・シュワルツ&アソシエーツの社長兼CEO。組織心理学の専門家として講演や経営陣へのコンサルティングを行う。著書にSmart Leaders, Smarter Teams: How You and Your Team Get Unstuck to Get Resultsがある。