ユーザーを感動させる商品開発を目指す

――そもそもソニーがスポーツ関連商品を開発する狙いはどこにあるのでしょうか。

写真左が中西氏、右が小池氏

小池 ソニーでは、スポーツを美容、ヘルスケア、食生活、住生活などと同様、ライフスタイルのひとつとしてとらえています。単に製品の機能だけを訴求するのではなく、より充実した生活、より楽しい生活、より健康な生活などライフスタイルそのものを提案しなくては、ユーザーを感動させることはできないでしょう。開発のやり方も当然変わってきます。まったく新しい技術を開発するよりも、すでに社内にある技術をつなげたり、見方を少し変えたりしながら、何を提案するのかが重要になってくるわけです。

――たとえばテニス愛好家は、「スマートテニスセンサー」を利用することで、より楽しいテニス・ライフを送ることができる、といったイメージですか。

中西 そうした提案もあります。自分自身、「スマートテニスセンサー」を使い始めてからテニスに関わる時間が長くなっただけではなく、より深くなっていることを実感しています。たとえば、テニス・スクールでは、1時間半のレッスンで平均500~600球打ちますが、自分の苦手なバックハンドはほとんど打っていないというデータが出るといった例もあります。はっきりしたデータが出てくると、次の練習はどうしようかなどと真剣に考え始めます。自分のデータだけでなく、ほかのテニス愛好家のデータもビッグデータとして溜まっていけば、フィードバックはさらに進化していくはずです。それをサポートするサービスもどんどん出てくるでしょう。好きなものに、どんどん“はまっていく”ような流れが出てくると思います。  また、はまっていくことによって新しい発想も生まれます。最近は、「勝ち、負け」だけではない楽しさを提供できるサービスや、スポーツ嫌いの子どもがスポーツ好きになれる道具などを開発したいといった夢も膨らんできました。

――「スマートビートレーナー」は、どのように進化させていきますか。

小池 これまで家電メーカーはハードによって機能を向上させてきました。それに対して、「スマートビートレーナー」では、ソフトウェアのアップデートによってどんどん進化させるというアプローチで魅力を高めていきたいと思っています。ユーザーの声をどんどん吸い上げてソフトウェア開発に反映させていけば、ユーザーニーズに応えるきわめて高い機能を持つ製品に育つはずです。

 すでに、ユーザーの声をいくつか製品に活かしています。たとえば信号待ちの時はランニングログの記録を止めてほしいという意見があったので、加速度センサーが止まったときにはログの記録を自動停止するという機能を追加して、ソフトウェアのアップデートで提供しました。信号待ち時のランニングログ記録をどうするかについては、私たちも以前から課題として認識しており、一時停止のボタンをつけていたのですが、信号待ちのたびに押すのは面倒だし忘れがちだとお客様からフィードバックを受けました。そこで、早速対応したわけです。これからもお客様からのフィードバックをベースに、新しい体験を増やしていきたいですね。

――IoTやビッグデータなどのデジタル技術の進展で、私たちの生活はどう変わりますか。

中西 軽量化、低価格化などによってセンサーが一般化し、いまではさまざまなものが測られるようになりました。もはや、測られてないものを探すのが大変なくらいの状況です。このようにセンサーで一生懸命測っている状況がフェーズ1だとすれば、いま来ているフェーズ2は、集めたデータをどう使えばユーザーは楽しくなるのか、ライフスタイルが変わるのか、すばらしい体験ができるのかを考える段階です。我々もここに注力して商品開発につなげていきたいと考えています。

(構成/竹内三保子 撮影/宇佐見利明)