●瞑想は再起力を高める

 複数の研究結果によれば、瞑想には不安を和らげる潜在効果があり、それが再起力(レジリエンス、困難から立ち直る力)を強め、ストレス下でのパフォーマンスを高めることにつながる(英語論文)。

 このことはまさに、エレメンツ・トラッフルズ(天然素材のみを使うチョコレートメーカー)の創業者アラク・バサに当てはまっている。彼女が瞑想を始めたのは、ゴールドマン・サックスとITGでトレーダーをしていた頃だった。切羽詰まった状況に晒された時でも、恐怖心とパニックに陥らずに済んだと彼女は断言する。「まさに市場が暴落して現場がパニックに陥った時のことでした。トレーディングデスクの人たちは大混乱です。でも私は瞑想の習慣のおかげで平静を保つことができ、市場崩壊の影響を和らげるためのソリューションを提案できたのです」

 メンズファッション会社バストラム(Vastrm)の創業者、ジョナサン・タングは、9・11同時多発テロの後に初めて従業員向けに瞑想を導入した。「9・11の直後、従業員は皆、明らかに動揺して気もそぞろでした。そこで私は瞑想のインストラクターを招いて、従業員たちに20分間静寂のなかで座る機会を提供することに決めました。皆、安らぎを実感できる場を本当に必要としていたので、部屋はすぐに満員です。セッションが終わった時、それまで1度も瞑想をしたことがなかった人たちは、平穏な気持ちで満たされていました。おかげで仕事に集中できるようになり、自宅では家族との時間も大事にするようになったのです」

●瞑想は心の知能指数を高める

 脳画像の研究によると、瞑想には感情を制御する能力を強める効能がある(英語論文)。

 連続起業家として成功しているアーチャナ・パチラジャンは、現在はオーガニック飲料メーカーのサトバを創業し、CEOを務める。その経験談によれば、人を率いるようになって最初の数年、彼女は物事が自分のやり方とスケジュールで運ぶことを望んでいた。「私はチームがどんな状況にあるかを理解しようとせず、メンバーたちのやり方が私の期待に沿っていなければ、ただ腹を立てるだけでした」。怒りは心臓血管の健康に悪影響を与えることが研究で示されている。リーダーにとって、怒りを制御して他者の立場になって考える能力は、決定的に重要だ。「瞑想のおかげで、辛抱強くなりました」とアーチャナは言う。「いまではチームとの関係も良くなっています。そして一番ありがたいのは、心の平静を保てることです」

 スタンフォード大学の脳神経外科医ジェームズ・ドーティ博士も、瞑想には心の知能指数を高める効能があると評価している。同僚の1人が最先端の医療機器を開発し、それを製造・販売する目的で会社を創業したが、経営危機に瀕した。そこで、初期の投資者であったドーティ博士がCEOに就任した。

 血気盛んな、しかし不満を抱えたステークホルダーたちとの会議で、ある投資家が頭に血が上って理不尽な態度を示していた。ドーティはその人物に共感を持って対応できたが、それはマインドフルネスの実践のおかげだと述懐する。「少し間を置いて、深呼吸を2~3回した。本当にそのおかげで、相手の話に耳を傾けることができた。そして彼の現況だけでなく、彼が何を望み期待しているのかということも含めて理解できたんだ。こちらが感情的な対応をしなかったことで、結果的に彼は支援側に回ってくれたばかりか、会社を成功させるうえで重要な協力者にもなってくれたよ。会社は最終的に、上場して13億ドルの評価を得た」