マーケティングマネジャーは高学歴・高収入であり、企業戦略と個々の製品やマーケットを整合させて売上げを牽引する、という重要な役割を担う。現在、その仕事の中には時間のかかる作業も含まれている。現場のデータに目を通し、価格を決定して伝えることや、原材料費の見積もりを出すことなどだ。

 それらの作業は、現時点で実用性が証明されているテクノロジーによって自動化でき、分析作業をマネジャー自身がやるよりも素早く正確に完遂できる。さらに、ビッグデータ解析と人工知能の組み合わせによって、コンピュータは何千人もの消費者それぞれにオファーやコンテンツをカスタマイズして提供する方法を、「学習」できる。これは、1人のマーケティングマネジャーではこなせない作業だ。

 我々の推計では、マーケティングマネジャーの業務時間の10~15%に当たる作業は、最新のテクノロジーの導入によって自動化できる。すると、ある興味深い可能性が生じる(組織にとっては課題にもなる)。機械に作業を引き渡すことで空いた時間は、どうすれば最も有効活用できるのか、ということだ。

 オートメーションの導入に当たっては、2種類の成果を考えなければならない。1つ目は、人間ではなく機械に作業させることで得られるリターンである(我々の試算では、自動化への投資はコストの3~10倍の利益をもたらす。その大半は、人件費の削減ではなく作業効率の向上によって生じる)。2つ目は、「自動化によって空いた時間を使って人間が新たに行う作業」から得られる利益だ。マーケティングマネジャーの場合、新商品のアイデア検討や、部下の監督、他の部門のマネジャーとの協業、新たな戦略の策定などに空いた時間を活用できる。

 具体的な機会を特定すべく、我々は米国経済のさまざまな職業における約2000の業務活動を調査した。その結果、技術的な観点において、従業員の労働時間の45%に当たる業務は、いまあるテクノロジーまたは実用性が証明されているテクノロジーによって自動化できる。しかし、完全に自動化できる職業、つまり機械に全作業を任せられる職業は5%未満にすぎない。そして米国の職業の60%において、現在行われている作業の30%前後を現行または実証済みのテクノロジーで自動化できると見込まれる。換言すると、米国の多くの仕事で、週の1.5日分の作業を自動化できることになる。

 今回の調査で得られた重要な発見は、機械がこなせる仕事の範囲である。非熟練労働者の単純作業だけでなく、前述したマーケティングマネジャーのように高いスキルを要する仕事も、ある程度自動化できることがわかった。その中には、経営幹部を含む高い職位の業務も多数ある。

 読者の皆さんの職業がどこに位置するのかは、最近発表されたこちらのインフォグラフィックスで確認できる(英語サイト)。ここでは米国の750以上の職種について、自動化できる業務の割合を時間に換算している。

 我々の調査で得られた総合的な結論を述べよう。

 自動化によって、仕事における役割の見直しが求められる。企業は次のことをしっかり理解できなくてはならない。機械が得意なことは何か、人間のほうが秀でているのはどこか。そして、両者の能力を最大限に引き出すために、業務プロセスをどう再構築すべきかである。ITがもたらす莫大なメリットを享受できるのは、単に旧来の作業を自動化するだけの企業ではない。仕事のプロセスを慎重に分析し、スマートな機械でそれをどう変革・強化できるかを見極められる企業なのだ。これはかつてのIT革命の時に、我々が長い時間をかけて学んだ教訓であり、ここでも改めて強調したい。

 高度な自動化に基づくビジネスモデルへとうまく移行できる企業は、優位を築くことができる。機械と人間のパフォーマンスを最大化すれば、効率性とイノベーションを同時に促進でき、売上げと利益の両方を伸ばせるのだ。自動化はまた大企業にとって、急成長しながらも敏捷性を保つ手段になる。

 ただし、失敗に伴う影響も大きくなるため、モデル化と実験に熟達しなければならない。その際にカギとなるのは、やはりスマートな機械と適切なデータの活用である。

 高度な自動化が進む時代の経営者に求められるのは、デジタル・テクノロジーへの理解を深め、人間と機械の両者を管理できる人材を見つけることだ。そうしたマネジャーの一部は、機械かもしれないが。


HBR.ORG原文:How Many of Your Daily Tasks Could Be Automated? December 14, 2015

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マイケル・チュイ(Michael Chui)
マッキンゼー・グローバル・インスティテュートのプリンシパル。技術革新の影響に関する研究を統括する。サンフランシスコを拠点に活動。

ジェームズ・マニーカ(James Manyika)
マッキンゼー・グローバル・インスティテュートのディレクター。サンフランシスコを拠点に活動。

メディ・ミレマディ(Mehdi Miremadi)
マッキンゼー・アンド・カンパニー シカゴオフィスのプリンシパル。エネルギー・資源部門で、人工知能、機械学習、ロボティクスに関する活動を率いる。