失敗を認め、撤退を急ぐことが
正しい行為という共通認識を

――これから日本企業においてもデジタルM&Aが加速していくと思われますが、心構えや準備についてアドバイスを。

 次の3点を念頭に取り組んでほしいと思います。

 1つは、失敗・撤退の判断をすることこそが正しい行為という共通認識を経営層・役員層が持つことです。

 デジタルの世界というのは、高速PDCAを回してどんどん方向転換しながら、新しいビジネスモデルや新しい製品・サービスをつくっていきますから、失敗・撤退の判断が遅くなるとダメージがどんどん大きくなっていきます。

 2つ目は、スピードを最重要KPIとすること。GE(ゼネラル・エレクトリック)は「FastWorks(ファストワークス)」と呼ぶ新たな製品開発プロセスを提唱していますが、まさに名前の通り、事業においては「素早く働く」こと、スピードが重要です。

 そして最後は、撤退基準を厳格に定め、運用することです。前述したように、能力を重視して買収するため、入り口はソフトである反面、撤退基準は厳格にする必要があります。

日本企業の経営手法の強みは
デジタルM&Aでも生かせる

――日本企業にとっては未知の部分が多いデジタルM&Aですが、果たして日本でも成功するのでしょうか。

 もともと日本企業の経営手法の強みは、「志を1つにする」とか、「先人に学ぶ」「厳しくて温かい」といった点にあります。じつは、この強みはデジタルM&Aでも生かせるんです。

 先ほどお話した「野望を描く」というのは「志を1つにする」こと、「違いを認め、尊敬し合える関係を築く」ことは「先人に学ぶ」こと、「撤退基準を厳格に定め、運用する」ことは「厳しくて温かい」ことと共通する話です。ですから、日本の企業にできないわけがありません。デジタルM&Aの必要性に迫られる時は、そう遠くないうちに訪れるはず。ぜひ日本企業に、グローバルなデジタル競争における市場の創造者、リーダーになってもらいたいと思います。

(構成/河合起季 撮影/宇佐見利明)