企業理念をいかにグローバルで共有するか

 その一方で、同時に企業の理念浸透には限度もあるのではないかと考える。特に、会社の理念を押し付けてしまうと、海外の社員からの反発を招く。筆者は理念浸透のセッションで、海外からの参加者が「宗教がかっている」、「クレイジーだ」などと疑念を持つ場面も何度か目にしたことがある。本社は外国人社員が自社の企業理念をどう受け止めるかということについて敏感になるべきだ。

 さらに、N社では「フィルムメーキング」という手法を使い、概念として理解した企業理念を、実際の行動シーンで表現するというグループワークを行い、理念の理解を深める工夫をしている。これは欧州企業の間でよく用いられる手法で、具体的には理念を学んだ上で、3分間のショートフィルムを企画、制作するという内容である。

  フィルム制作の目的は、最近、仲間入りしたばかりの同僚に対して「うちの会社はこんな会社です。うちの会社ではマネジャーはこんな風に働いています」ということを伝えるという設定にしている。言葉や育った文化的・社会的環境が異なり、日本で初めて会ったばかりのメンバーと一本のフィルムを作るというのは非常に難易度の高い作業である。実際、企業理念をどのように表現するかについて、さまざまな意見が飛び交い、時には対立も生まれる。

 たった3分間のフィルムであるが、制作に最低4時間は要する。時間効率が悪いと思われるかもしれないが、このプロセスを通じて、一人ひとりの日頃の会社への想いが共有でき、強いチームワークが醸成される。「フィルムメーキング」は、企業理念を行動で理解する上で大変効果があり、欧州企業の一部では、社員が作った素晴らしく出来の良いフィルム作品を社内広報用に活用している企業もある。この手法を導入した日本企業では、企業理念をグローバルに伝える上での様々なヒントが学べるということで幹部からの評価も高い。

 もう1つの⑥リーダーシップ開発のモジュールは、一般管理職のためのリーダーシッププログラムの内容と比較的よく似ている。研修前に各職場で360度評価が行われ、参加者一人ひとりの上司、同僚、部下から参加者本人のリーダーシップについての評価をもらう。セッションではリーダーシップの基本概念を学ぶと共に、360度評価の結果に基づいて参加者がリーダーシップ向上のためのアクションプランを考えるという進め方だ。N社では第一会合のリーダーシッププログラムで個別に外部のコーチがアサインされ、本人がアクションプランを策定する際には、コーチがサポートをする。