こうした調査結果をふまえ、マーケターには何ができるだろうか。

1.購買時だけでなく、使用時に効果を発揮するブランド戦略を考える

 誰かがそのブランドを使っていたら、周囲の友だちもそのブランドに気付くように仕向けよう。アップルはiPodの初期の宣伝で、機器本体が人目に触れない時でも、特徴的な白いイヤホンが目につくようクローズアップした。

2.ブランドに関する意思決定が個人だけでなく集団でも下される場合、集団ごと取り込む努力をする

 ある世界的な飲料メーカーは現在、集団による購入に値引きを提供し、その商品がいかに集団でシェアして楽しめるかを宣伝している(ちなみに、いまやクランフィールド大学のバーは、エマがピムスをグラスで注文するとピッチャーを勧めるようになった)。

 ブランド調査によれば、コカ・コーラが実施したネームボトル(名前入り容器)のキャンペーンは、「商品についてシェアしたい」というブランド属性(飲料の購買を促す3大属性の1つ)を獲得するうえで一役買った。これは、成功を収めている「コークをシェアしよう(Share a Coke)」キャンペーンの一環であり、その効果の1つとして、好ましい形でピア観察が促進されている。

3.通常では人目につかない顧客行動を、同類顧客に開示する

 購買者数の図をウェブサイトに加えるだけで、売上げも支払い額も増加する。その図が顧客自身の属するグループに関するものであれば、効果はさらに高まる。ホテルの宿泊客にタオルの再使用を促す実験で、こんな結果が出ている。「地球を大切に」といった文言で諭すよりも、過去の宿泊客がどれだけタオルを再使用したか、という統計を示すほうが効果的であった。

4.製品の発売時にピア観察を組み込む

 ハチソンが初期のソーシャルメディア用携帯端末INQ(インク)をシンガポールで発売した際、その急速な広まりに寄与したのは通勤電車であった。同社はリアルタイム・エクスペリエンス・トラッキングにより、乗客が他人の携帯電話を特に意識するのは夕方の通勤時であることを知った。そこで若者を多数雇い、鮮やかでカラフルなINQを、電車内を移動しながら使わせたのだ。

 これらの戦略はどの程度効果があるのだろうか。他にできることはないだろうか。我々はマーケターの意見をもっと聞きたい。今回の研究について優良企業のマネジャーたちに話したところ、その反応は共通のパターンをたどったからだ。彼らは、このタッチポイントの明らかな重要性を見落としていたことにまずは驚く。その後すぐに、社内の他の誰かを挙げて責任を言い立てる。

 マーケティングコミュニケーションの担当者は、費用を投じた広告の効果を高める責務を負う。顧客サービスに携わる人々は、NPSを向上させる責務を負う。では、ピア観察の重要性を把握する責務は、誰が負っているだろうか――このことを、我々はまず最高責任者レベルの幹部たちに問いたい。そして、数多の広告専門家と代理店にも尋ねよう。この無料のタッチポイントを消費者に役立つ形で活用するのは、誰の役目なのだろうか。


HBR.ORG原文:What Really Makes Customers Buy a Product November 09, 2015

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ヒュー・N・ウィルソン(Hugh N. Wilson)
クランフィールド大学スクール・オブ・マネジメント教授。同大学のカスタマー・マネジメント・フォーラムの議長も務める。

エマ・K・マクドナルド(Emma K. Macdonald)
クランフィールド大学スクール・オブ・マネジメント准教授。同大学のカスタマー・マネジメント・フォーラムのリサーチ・ディレクター。南オーストラリア大学エーレンバーグ・バス・インスティテュートの非常勤研究員でもある。

シェーン・バクセンデール(Shane Baxendale)
ロンドンを拠点とする市場調査およびコンサルティング会社、MESHの統計専門家。クランフィールド大学スクール・オブ・マネジメントでは博士課程に在籍。