――そうしたパラダイムシフトが訪れると、自動車メーカーも付加価値創造への取り組みに力を入れ始めるのではないでしょうか。

 そうです。今後のクルマ単体価値の低下や変化を考えると、付加価値創造は非常に重要な経営課題となります。

 CO2削減や事故防止などの環境・安全対応に迫られると、クルマは小型化していき、単価は低下するはずですが、環境対応の特別な装備を付けるとその分割高になって売れなくなります。その結果、クルマ単体ではなかなか儲からなくなっていきます。

 一方で、ケータイやタブレットPCのように、クルマがモビリティ端末化すると、付加価値はクルマからネットワーク側にシフトしていってしまい、やはりクルマ単体では儲からなくなります。

 だからこそ、「ワクワクするクルマ体験」や「新たな収益モデル」「製品からサービスへ」といった別の軸の付加価値創造が必要になってくるわけです。

付加価値創造への取り組みは
企業規模によって変わる

――現時点で、既存の自動車メーカーはどのような対応をしていますか。また、今後どんな対応が必要なのでしょうか。

 世界屈指の大規模メーカーは、何が起こっても対応できるように、電気自動車や自動運転、人工知能、サービス化など、あらゆる潜在価値に対してすでに先行投資しています。

 ただ、中堅以下のメーカーは、すべては追えないため、自社の強み・弱みを精査し、強みを発揮できるところに資本を集中投資する必要があります。

 クルマは今後ますます高機能化し、「自分にとって最適なパートナー」であることを求めるユーザーも今以上に増えていくと考えられますから、あえて「走りを楽しむクルマに特化する」という戦略も間違いではないでしょう。家電に比べて、ハードウェアとしての重要性がより高いのがクルマの特徴。走らせ方にどんなオリジナルの味付けをするかで、差別化できる余地はあると思います。

――日本の自動車メーカーに期待することはありますか。

 これまでお話したことは、日本の自動車メーカーに限ったことではなく、世界共通の課題です。

 ただ、日本は先進国の中でも高齢化や都市化・過疎化が最も早く進む課題先進国です。こうした課題に対してソリューションを開発し、世界に展開していければ、日本にとって大きなビジネスチャンスになるでしょう。例えば、過疎地で自動運転車のインフラを整え、アシがなくて困っている高齢者にそのクルマを利用してもらう、など。

 実際、政府も2020年の東京五輪・パラリンピックまでに、クルマの自動運転技術の実用化と普及を実現させる方針で、これを基に交通マネジメントとインフラをパッケージ化した輸出ビジネスの創出を目標に掲げています。