すべての企業が脳科学をビジネスに活かすべき

 企業はお客様の「脳を満足させること」で利益を上げ、それによって存続することができる。そのためどうすれば脳が満足するかを知ることが、ビジネス成功の鍵である。

 人間の脳は複雑であり、研究で明らかになったことは脳全体から見るとごくわずかかもしれない。しかし一方で、脳科学研究によって脳の機能や働きについて多くのことがわかってきたのも事実である。重要なことは、その知見をどのようにビジネスに活用するかである。

 ICT(情報通信技術)の進化がビッグデータ処理を可能にし、データサイエンスと人工知能技術を急速に進化させている。そして、これらの科学技術の進化が脳科学研究をさらに推進し、脳科学がさらなる人工知能技術の開発に役立ってもいるのである。

 その一例として筆者らの研究を紹介したい。我々は、国立研究開発法人情報通信機構(NICT)傘下の脳情報通信融合研究センター(CiNet)で研究開発している、fMRI(機能的磁気共鳴画像法:脳の局所的な血流変化を捉える測定方法)を活用した脳情報解読技術が、テレビCMを中心とした動画広告の評価・改善・出稿前の効果予測などに応用可能であることを実証実験によって確認した。

 視聴者に「何を見ているか」「どんな感じがするか」と質問して確認する必要はない。テレビCMのシーンごとに、視聴者が認知している対象が「女性である」「子どもである」と解読できる。また、「食べているシーン」や「飲んでいるシーン」などのように、被験者が認知している動きも解読できる。さらに、「楽しい」「かわいい」「きれい」など、シーンごとに感じている印象も解読可能である。[注2]

 こうした解読が可能になった背景には、脳計測技術の進化とともに、ディープラーニングを中心とした人工知能の能力が飛躍的に向上していきていることが挙げられる。このように脳科学と人工知能技術の融合による脳情報解読のスパイラルアップは始まっており、それをビジネスに活用する動きはさらに拡大するであろう。

 脳科学は基礎研究でありビジネスには使えないと高をくくっていると、これから10年以内には、その研究成果を積極的に活用することを試みている企業と、そうでない企業では大きな差がつくことは間違いない。企業の規模は関係ない。脳科学の成果を活用しビジネスで成功するためには、「付け焼刃」では勝負できない。いますぐ、この知見を活かすことが求められているのである。

 

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