顧客の声を取り込む5つの方法

 では、企業や戦略ユニットとして、具体的により多くの、そして結果として質の高いビジネス・アイデアを生み出していくためには、どのようなツールが効果的なのだろうか。

 関連する研究を振り返れば、やはり顧客からの声をシステマティックに取り込み、具体的なアイデアに落とし込んでいく手法が効果的であり、売り上げの増加などの結果にもつながっている。以下に、大企業に分類される企業にとって、“効果的”に価値あるアイデア導出につながってきたと評価されている情報収集手法、上位5つがリストアップ(注2)されている。

 

1. エスノグラフィー:顧客の製品を使用する行動パターンなどを、現場で観察し、また顧客との対話なども通して、顧客も気づいていないような潜在的なニーズや問題点などを抽出していく

2. 顧客訪問インタビュー:数人のグループで顧客を訪問し、共通の質問ガイドにもとづき、インタビューデータ(質的データ)の収集・分析を行う

3. フォーカス・グループ:数人から10人程度の参加者を集め、ファシリテーターの作り出す場での対話やインタビューを通じ、ニーズや問題点などを洗い出していく

4. リード・ユーザー:潜在的に大きな顧客群に先駆け、ニーズを先取りし、製品・サービスなどを試しながら解決策を模索している、一部の先端的な顧客群へのインタビューなどを通じて、問題点や革新的な解決方法など模索する

5. 顧客のデザイン参加:ITを利用したツールを介して、顧客が実際のプロダクト・デザイン等に参加し、そこからの示唆を生かして製品化していく

 

 この研究では、全18種類のアイデアの創出方法が調査対象になっているが、上位5つの方法は、全て顧客からの情報をもとにしている点は重要だ。また、このリストは“効果”が高い順に並べられているが、使用頻度で見ると、エスノグラフィーと顧客のデザイン参加の二つの手法は、未だ中位にとどまっている。デザイン思考の価値が明確になってきている現在、とりわけ効果が高く、しかし使用頻度が低いエスノグラフィーの重要性は、今後一層高まっていくと考えられる。

 このような顧客が持つ(潜在的なものも含めた)個別のニーズや問題点の抽出に加えて、顧客の購買プロセスをイメージした上で、何をどう組み合わせれば、顧客の時間に最も価値を与えることができるのかを考えることがビジョン作りに役立つ。以下の図2(注3)では、米国ウォートン・スクールのイアン・マクミラン教授らの「消費チェーン」をもとに、顧客の購買プロセスが、「決めてみる」「買ってみる」「使ってみる」という3段階に大別されている。それぞれの段階で、顧客の時間を節約するための工夫はできないか、時間が節約できないとすれば、時間に何か付加価値をつけることができないか、と考えてみることが、新しい“組み合わせ”を考えるにあたり重要だ。