我々は2つの実験を行った。第1の実験では243人の成人参加者を2つのグループに分け、一方のグループには、実験のスポンサーであるIARPA(Intelligence Advanced Research Projects Activity:アイアーパ。米国家情報長官に所属する研究機関)の委託でつくられた30分間のビデオ「バイアスを減らす方法」を見てもらった。

 このビデオはまず、ヒューリスティックス(経験則、発見的学習)とは何かを説明する。ヒューリスティックスは情報処理の近道であり、必ずしも正確とは限らないが、素早く効率的な意思決定を可能にするものだ。ビデオはそれから、なぜヒューリスティックスが時に誤った判断をもたらすかを説明する。さらに「バイアス盲点」「確証バイアス」「根本的な帰属の誤り」について解説し、これらを緩和する方策を示す。

 もう1つのグループには、コンピューターゲーム「失踪:テリー・ヒューズを捜せ」をプレーしてもらった(紹介動画)。前述した3種類の認知バイアスが生じる状況をつくり、その影響を緩和するよう、我々の研究チームが開発したゲームである。プレーヤーは行方不明の隣人テリー・ヒューズという人物を探しながら、さまざまな意思決定と判断を下していく。そして1つのレベルをクリアするたびに、プレー中の決定にどのくらいバイアスがあったか個々人に評価が提示される。プレーヤーには練習のチャンスが与えられ、それぞれのバイアスを減らす方策が教えられる。

 我々は、各参加者がゲームおよびビデオを体験する前と後で、3つのバイアスにどの程度囚われたかを測定した。この第1の実験ではゲームにもビデオにも効果があったが、ゲームのほうがより効果的だった。ゲームをプレーしたグループは、3つのバイアスがプレー直後で約46%減、長期的には35%減という結果だった。これに対してビデオを見たグループは、3つのバイアスが直後で約19%減、長期的には20%減であった。

 第2の実験は、成人参加者238人のうち、1つのグループには「アンカリング」「投影」「代表性」という3種類のバイアスを扱ったビデオ「バイアスを減らす方法2」を見せた。またもう1つのグループには、コンピューター推理ゲーム「失踪:最後の秘密」をプレーしてもらった(紹介動画)。これはプレーヤーが依頼人の犯罪容疑を晴らし、逆に依頼人を告発した者の犯罪を暴くという内容である。ゲームの中で、アンカリング、投影、代表性のバイアスを試す判断を迫られる。そして、レベルをクリアするたびにバイアスの程度が測定され、その人に合った助言、練習問題、バイアス緩和の方策が与えられる。

 この第2の実験でも、ゲームのほうがビデオより効果が高かった。ゲームをプレーしたグループは、3つのバイアスがプレー直後で約32%減、長期的には24%減であった。これに対してビデオを見たグループは、ビデオ視聴直後で約25%減、長期的には19%減という結果だった。

 これらのゲームは米国の情報分析官のバイアスを減らす目的でつくられたもので、すでに複数の国家情報機関の訓練学校に導入されている。しかし、この種のゲームは個々の決定事項ではなく意思決定者自身に効果が及ぶため、他のさまざまな状況と決定事項にも有益となり、しかもその効果は長く続く(このゲームの市販バージョンも開発中である)。

 ゲームはまた、1度開発しておけば、訓練を受ける人数が増えても1人あたりの限界費用がきわめて小さいという点でも魅力的だ。判断力を向上させ、偏った意思決定がもたらす手痛い過ちを減らすテクニックは増えつつある。本記事で述べた実験やその他の最近の研究が示すように、インタラクティブな訓練法はそこに加えるべき有望な手段なのだ。


HBR.ORG原文:How a Video Game Helped People Make Better Decisions October 13, 2015

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キャリー・K・モアウェッジ(Carey K Morewedge)
ボストン大学クエストロム・スクール・オブ・ビジネス准教授。マーケティングを担当。