私が話をした専門家の中には、アクティビストによる投資を抑制する方向で規制すべきだと考える人はいなかった。バーンスタインは言う。「従業員が恩恵を受けないからといって、(アクティビスト介入による)生産性の改善や経営の合理化といった効果を抑制すべきだとはとても思えません。それよりも、その効率向上を従業員の所得拡大につなげる方法を考えるほうがずっといい」

 従業員持株制度を拡大することで、生産性向上の恩恵が従業員に反映されうる、とバーンスタインは指摘する。実際に、利益を従業員と共有する制度そのものが生産性を向上させるという証拠がある(英語記事)。また、マカフィーが提案するのは、米国で低所得者向けに実施されている「給付付き勤労所得税額控除」(EITC)を拡大したような「負の所得税」だ。「市場所得が十分とは思えない場合、(政府が)それを補てんすればよいのです」

 デューク大学の経済学者であり、今回の論文の共著者でもあるアロン・ブラブは、アクティビストの介入においては、生産性と賃金の乖離以外の現象も見られることを強調している。たとえば、アクティビスト介入後の生産性は、労働組合化が顕著な業界で最も向上したが、その理由を説明するのは難しいという。また、ホワイトカラー労働者のほうがブルーカラー労働者よりも待遇が悪化したようで、実際に、前者は介入後に賃金が低下していた。つまり、アクティビスト、生産性、そして賃金の関わりについては、まだ理解できていないことが多く存在するのだ。

 今回の論文は、生産性と賃金との開きについて興味深い観点を提示するものだ。しかしブルッキングス研究所のイレーン・カマークは、アクティビストの行動のみを根拠に金融セクターの役割について一般化することに対して、クギを刺している。自身の論文の中でも述べているように、「長期的な成長を犠牲にした金融手法」は数多く報告されている現象だと私に語った。

 アクティビストの役割はともかく、経済において長期的な生産性を改めて重視することは必須である。だが、アクティビストに関するデータから示されたように、労働者の恩恵を確保するには、それだけでは十分でないのかもしれない。


HBR.ORG原文:How the Carl Icahns of the World Benefit Firms but Not Workers October 09, 2015

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ウォルター・フリック(Walter Frick)
『ハーバード・ビジネス・レビュー』のシニア・ アソシエート・エディター。