世界共通とローカル密着の両立

――それは、商品のカテゴリーによって違うのではありませんか。消費財では、カテゴリーごとに地域差の大小があると思います。食品や飲料は地域差が大きく、化粧品などは比較的共通性が高いのではないでしょうか。

 いいえ、必ずしもそうではありません。日本では女性のスキンケアに7つのステップがあると聞きましたが、国によってステップの数は違います。だから消費者は、自分の肌を本当に理解してそれに合う商品を出せるのは、自国の企業だけと信じる傾向があるようです。これも本質的な違いの一つです。

 ヘアケア用品も、髪質によって商品が大きく違います。アジア系の髪は、ヨーロッパ系やアフリカ系の髪とは違うのです。毛染めなどは世界どこでも同じに思えますが、髪質が違うのでニューヨークで買った商品が日本人に合わないことはあります。全く同じ商品を、世界で同じように売れると思ってはいけません。アイシャドーも口紅も、肌の色によって好まれる商品が違います。

――一方で、飲料のコカ・コーラや化粧品のロレアルのように世界共通のブランドもあれば、ローカルブランドもあります。世界で戦うには、なるべく共通で行くかローカル密着で行くか、二つの道筋があるのではないでしょうか

 そうです。ただし、何も考えずブランドを増やせば、それを管理するコストも増えます。そこで、ブランド体系を工夫して設計する必要があります。マザーブランドを共通にし、狙うセグメントごとにサブブランドを変えるのです。そうでないと、ブランドが増えすぎて非効率になります。同じブランドアンブレラの下に、違う商品を入れてもかまいません。

 たとえば、寒い地方ではスキンケアに濃いクリームが必要ですが、暖かい地方ではもっと薄いローションなどですみます。それでもローションとクリームを同じブランドで打ち出すことは可能です。「あなたの肌特性と気候に、最適な成分を」のような統一メッセージでマーケティングすればよいのです。基本的なブランドポジショングが同じなら、マーケティングもかなり共通にできます。唯一の違いは中身です。

 さらに、より深く違いを掘り下げてサブブランドを作っていきます。たとえば新興国では、家政婦が多くいます。もし自分の家の家政婦が自分と同じ化粧品ブランドを使っていたら、ブランドをもっと高級なものに変えたくなるかもしれません。家政婦と同じものでは、高級感も無くときめかないからです。そうすると家政婦とは違うブランドを選べるような、サブブランド戦略が必要になるのです。

――日本企業は、日本で売れた商品をそのまま海外展開したがるようです。

 それだと、新興国が同じものを買える経済水準になる頃には、他の企業がその市場を押さえてしまいます。他社が青田刈りを終えているというのに、日本企業は現地の経済成長を待つだけという事態になりかねません。

 このインタビューで最初に言ったように、世界は誰もがよい商品を製造できるように変わってきています。たとえばインドの携帯電話市場では、100ドル位でスマートフォンを売っているMicromaxがトップ企業です。インドの消費者がもっと豊かになったら、どのブランドのスマホを買うと思いますか。

 高価なSony EricsonやSamsungに自動的に移行するでしょうか。もし私が消費者なら、Micromaxの高級機を買うことでしょう。GMが安いシボレーから高いキャデラックまで商品ポートフォリオを揃えたのも、古典的ですが同じ目的です。

 どうして日本企業は、消費者が自社の高級品をある日突然買ってくれるようになると信じて、待つのでしょう。