●顧客のデータを自社がどう使うか、顧客に示す(例:ジョウボーン)

 ジョウボーン(Jawbone)は、睡眠パターンと身体活動のデータを記録する活動量計の「UP」を製造している。ユーザーが同社の製品を買うのはそのデータを見られるからにほかならないが、ジョウボーン側もデータを見ている。同社はそのデータを用いて興味深い話題を提供することで、顧客からの情報をどのように集約・分析しているかを顧客に知らせているのだ。

 タイムリーな話題の提供により、マスコミからも高い関心を集めている。2014年にカリフォルニアで大地震が発生した夜の、UPユーザーの睡眠パターンを震源地からの距離別に示したグラフは、何百という主流メディアやオンライン上で取り上げられた。ジョウボーンのブログはほかにも、こんな記事を掲載している。バレンタインデーにUPユーザーは何を食べ、何を飲んだのかスーパーボウルの観戦中にはチキンウィング(鶏肉の手羽)の摂取量がどれほど増えたのかワールドカップはヨーロッパのUPユーザーの睡眠にどう影響を及ぼしたのか

 あなたの会社が、顧客のデータを自社のインサイト獲得やビジネス上の意思決定に利用しているのなら、そのデータをコンテンツにして顧客に還元するとよい。そうすればトラフィックが増えるだけでなく、顧客データを自社がどのように分析しているのかを顧客に理解してもらえるからだ。

●顧客のエンゲージメントとロイヤルティを築く(例:OKキューピッド)

 多くの企業は、商品が売れた時点でマーケティング活動を終了する。だが、顧客をつなぎ留めておくことは、獲得することと同じくらい重要である。そして、データ主導型のコンテンツを通して自社の製品・サービスからもっと価値を得る方法を示すことが、顧客をつなぎ留めるのに役立つ。

 その意味で、出会い系サイトのOKキューピッドが長きにわたりデータを提供しているブログは、大きな役割を果たしている。ユーザーのデートの分析結果を活用し、さまざまなテーマを探求しているのだ。相手を選ぶ際の人種の好みルックスの重要度といった話題を扱うこのブログは、メディアの高い関心を集め、にもなった。同時に、ブログはユーザー自身がデート体験を向上させるための具体的な知見にもなっている。OKキューピッドのサイトでメッセージを送る際の最適な文字数から、初回のデートで訊くべき最も効果的な質問に至るまで、同社が提供するデータに根差した知見はユーザーの恋愛を助けている。

 あなたの会社がビジネスのパフォーマンスを向上させるために用いるデータは、おそらく顧客にとっても役に立つ知見となるだろう。それを共有する方法を見つければ、顧客によりよい体験を提供でき、自社の製品・サービスへの定着度を高めることができる。

●自社の成果を伝える(例:キックスターター)

 顧客を獲得して満足させているからといって、その状態にあぐらをかいていてはならない。クラウドファンディングサービスを提供するキックスターターは、自社の失敗についてメディアから厳しい批判が浴びせられた2014年に、データを活用して説得力のある成功事例を発表した(資金調達の成功件数、出資者が世界中に広がったことを示す世界地図など)。

 キックスターターのように、購買者だけでなくビジネスのパートナーも顧客である場合には、自社の成果を伝える行為はとりわけ重要だ。これからプロジェクトを立ち上げようとしている人たちに対して、このプラットフォームは資金を集めるための有益でダイナミックな方法であると納得させる必要がある。同社のブログはデータを頻繁に用いて、成功事例を強調している。たとえばクーラーボックスにミキサー、スピーカー、USBポート、食器、LEDライトなどを装備した「クーレストクーラー」のような個別プロジェクトの成功譚や、出資者500万人という節目の目標達成についてなどだ。

 キックスターターのブログは、記事のメインカテゴリーの1つに「データ」を設けている数少ないブログの1つである。この方法によって、公開されている知見のソースを読者が見つけやすくなるため、他社も採用するとよいだろう。

 あなたの会社は、自社のストーリーをメディアが伝えてくれるのを待たずに、顧客や投資家に直接伝えたいと強く望んでいるだろうか。その場合は、パフォーマンスに関するデータを作成して発表することは、ストーリーの主導権を握るよい手段となる。

 以上の例が示すように、顧客関係の各段階でストーリーを発信する際に、データは強力な役割を果たすことができる。もちろん成功例はほかにもたくさんあり、特にメディアや情報関連、グラフィックデザインなど、データの発信を生業とする企業に多くの成果が見られる。しかし本記事の事例が示すのは、データジャーナリズムに携わっていなくとも、データを用いて顧客に語りかけ、顧客との絆を保つことは可能だという事実である。


HBR.ORG原文:6 Ways to Tell Stories with Data Throughout the Customer Lifecycle October 02, 2015

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アレクサンドラ・サミュエル(Alexandra Samuel)
テクノロジーに関する研究者、スピーカー、著述家。ソーシャルメディアの専門家。『ウォール・ストリート・ジャーナル』をはじめ数々のメディアに知見を提供する。著書にWork Smarter with Social Media (Harvard Business Review Press, 2015)などがある。