筆者個人は、我々は今まさに、既存の仕組みやプロセスの創造的破壊を伴った「起業革命」の時代を生きている、と認識している。例えば、AirbnbやUberがシェアリングエコノミーのうねりの中で、一人の起業家によって立ち上げれられ、我々の生活パターンを大きく変革していく。個々人が、世界を変えることができる時代を迎えながら、多くの”既存”のやり方は、個人の創造力の力で破壊されていく。日本に暮らす大半の人は、起業革命の大きなうねりを実感していないようだ。先のデータは、我々が危機的状況に直面していることを強く示唆している。

起業がもたらす社会的価値

 アントレプレナーシップが求められるのは、不確実性の高い社会で生き抜くためだけではなく、雇用創出やイノベーションの面でも意義があると考えられるからだ。失業することにより、人々が感じる幸福度は著しく低下する。収入源を失うだけでなく、築きあげてきた人とのつながりやコミュニティにヒビが入り、将来の絵を描くための新たな刺激を得る機会も減少する。仕事があるということは、幸せを感じるための必要条件だ。

 では、雇用の創出を担っているのは誰か。多くの歴史のある優良中小企業も、雇用の維持において大きな役割を担っている。しかし、より大きな社会的インパクトを持っているのは、起業家により新たに設立されたスタートアップと呼ばれる企業のなかでも、急成長を目指している企業群である。英米のデータを振り返れば、このような企業群は、全企業のうちの数%を占めるに過ぎないが、新たに生まれた雇用の数十%から過半を、過去数十年にわたり創出し続けてきている。

 これは、多くの大企業が生き残りをかけ、従業員削減に乗り出しているのとは対照的である。日本だけでなく、世界各国で、スタートアップの件数が増えるにつれ、大企業は生き残りをかけ、経営陣による部門買収(マネージメント・バイアウト)や事業部門や子会社を売却する(ダイベストメント)などの手法で事業を再構成し、また従業員を削減しスリム化を図っている。換言すれば、より細分化された多数のカスタマー群に、柔軟かつ個別の対応をするために、多くの相対的に小さな企業が新たに生まれていることになる。