自ら力をつけることと、力のある人を巻き込む力を

 特に印象に残っているのが、資生堂の社長をされておられる魚谷雅彦さんです。当時、日本コカ・コーラ会長だった魚谷氏との書籍づくりは、まさに「人を巻き込む」力を目の当たりにした瞬間でした。「こういう本にしたい」という構想を実に明るく話される。そして、面倒なプロセスでもこちらを奮い立たせてくれる言葉をちりばめられる。お会いするだけで元気をもらえるような方です。

 魚谷さんは米国でMBAも取られ、マーケターとしても多くの実績を残して来られた方なので、論理的思考や戦略的思考も相当なものですが、人を巻き込む力こそ、魚谷さんの真骨頂なのだと感じました。

 元ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)社長の丸山茂雄さんは、「ロックの丸さん」と呼ばれ、日本のロック界をメジャーにした立役者と言われています。しかしご本人に聞くと「僕は何もしてないんだけどね」とおっしゃいます。そして当時の丸山さんの部下の方に聞くと「丸さんの笑顔が見たくて、みんな頑張った」と言います。つまり、丸山さんはミュージシャンや社員など、多くの人を巻き込んで音楽業界を発展させた人でした。

 どれだけ素晴らしい商品もマーケティングや営業の力なしに成功しません。技術に詳しくない人でも優秀なエンジニアの力を引きだす力はいまや必須です。自ら「できる」力を身につけると同時に、「できる人を巻き込む力」を身につけることで、何倍もの大きな仕事を成し遂げることができるのです。ハーバード・ビジネス・レビュー最新号の特集は「人を巻き込む技術」です。いまリーダーにとって最も重要なスキルの1つとしてこの特集を企画しました。新しい1年が動き出したこの時期に、是非お読みいただければ幸いです。(編集長・岩佐文夫)