こうした事実から、ある基本的な疑問が浮かび上がる。このうえなく素晴らしい実績を持つCEOは、業績不振の企業を立て直すことができるのだろうか。

 マサチューセッツ工科大学の経済学者アントワネット・ショアーによると、答えは約60%の確率でイエスだという(英語論文)。つまり、コインを投げて表が出る確率とさほど変わらないことになる。

 経営者が業績に与える影響について、シカゴ大学のスティーブ・カプランによる報告はさらに厳しい現実を突きつける。彼は、ベンチャーキャピタルで資金調達後にスタートアップから上場へと至った106社を対象に、経営陣の相対的重要性を調査した(英語論文)。その結果、ベンチャー投資家の半数は、事業計画段階においては経営陣を最も重要な要素だと見なしているものの、IPOを迎える段階になるとその度合いは著しく低下することが判明した。

 カプランは次のように結論づけている。結局は非人的資産、つまり会社の堀のほうが人的資産より重要であり、その相対的重要性は時とともに増していくのである。

 これが意味するところは明らかである。投資家は第一に適切な業界と会社を選ぶべきであり、その次に適切な経営者を選べということだ。事業の根本を成すアイデアや参入業界を変えることよりも、成果を上げられない経営者をすげ替えるほうがずっと容易である。

 とはいえ競争の激しい環境では、ほんのわずかな優位性でもコインを投げるよりは当然有益だろう。では、成功を収めた経営者にはどんな違いがあるのだろうか。ふたたびスティーブ・カプランの研究を見てみよう。彼はCEOの特徴を、CEO職への採用および会社の業績に関連づけ、その重要性を調査した(英語論文)

 プライベートエクイティ・ファンドで資金調達をした企業のCEO300人以上を詳細に評価したところ、実行面の能力に富む人のほうが、チームづくりや傾聴力といったソフトスキルを売りとする人よりも、優れた業績を上げていることがわかった。実行面の能力とは、効率性、整理能力と計画性、細部への配慮、粘り強さ、能動的、高い基準を設定する、などである。この調査結果は、1967年にピーター・ドラッカーが述べた有能な経営者の条件が、現代にも相通じることを示している。

 これらがすべて真実ならば、多くの上場企業におけるCEOの高い離職率は、トップの経営がお粗末であることの表れというより、もっと深刻な問題を浮き彫りにしている。それらの企業は競争優位を持ち合わせておらず、それを見出してくれるCEOをくじで引き当てようとしているのだ。

 その願いが叶う確率は、高くない。


HBR.ORG原文:Profit Is Less About Good Management than You Think September 28, 2015

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ホセ・アントニオ・マルコ=イスキエルド(José Antonio Marco-Izquierdo)
マグナム・インダストリアル・パートナーズのパートナー。同社はスペインとポルトガルで投資を行うプライベートエクイティ会社。