戦略パレットは5つの典型的な戦略スタイル、いわば5つの基本色で構成されている。これらは地域、業界、機能、企業ライフサイクルといった事業要素ごとに、それぞれの環境に合わせて適用できる。

5つの戦略環境

 戦略とは本質的に問題解決であり、現在抱えている具体的な問題が何かによって最善の戦略は変わってくる。そして自社の置かれた環境が、戦略スタイルを左右する。つまり、まず環境を吟味したうえで、それに見合うスタイルを見つけ、適用する必要があるのだ。

 だが、事業環境というもののあり様は、どう表せばよいのだろうか。また、勝利への道筋を示してくれる最善の戦略を、どう選び出せばよいのだろうか。

 事業環境は、簡単に識別できる3つの次元によって左右される。1.予測可能性(将来の環境をどれほど予測できるか)、2.改変可能性(独力あるいは他社と協働して、環境にどれほど影響を及ぼせるか)、3.過酷さ(自社はその環境で生き残れるか)である。これら3つの要素をマトリクス化すると、5つの異なる環境が浮かび上がる。各環境にはそれぞれ固有の戦略スタイルとその実行方法が求められる。

 以下で示すように、各環境にはそれぞれ異なる戦略スタイルが適している。

 予測可能な「伝統型(Classical)」の環境は、ポジショニング戦略と相性が良い。つまり、規模、差別化、あるいはケイパビリティで獲得できる優位性をベースとし、包括的な分析と計画策定によって実現できる戦略だ。

「適応型(Adaptive)」の環境では、持続的な実験が必要となる。変化が速く予測不可能なため、計画が機能しないからだ。

「先見型(Visionary)」の環境では、新たな市場を最初に切り開く、あるいは既存の市場を破壊することが勝利に結びつく。

「形成型(Shaping)」の環境では、企業は他社と協働して、他の利害関係者の活動を取りまとめることで、自分たちに有利な業界構造を形成できる。

 最後に、「再生型(Renewal)」の環境は過酷な状況であり、企業はまず生き残るためにリソースを節約・確保しなければならない。その後、成長軌道を回復して長期的な繁栄を実現するために、他の4つのアプローチからどれかを選択する。

 簡単に言えば、各スタイルは最優先すべきことがまったく異なるのである。

・伝統型:大きくなれ
・適応型:速くなれ
・先見型:先行者になれ
・形成型:オーケストレーター(まとめ役)になれ
・再生型:生き残れ

 正しいスタイルを選べば見返りがある。我々BCGの調査によると、環境に見合った戦略を採用している企業は、そうでない企業に比べ、株主総利回りが4~8%も上回っていた。しかし、調査対象企業の約半数で、戦略と環境に何らかのミスマッチが生じていた。

※後編に続く(2015年12月21日掲載予定)


HBR.ORG原文:Navigating the Dozens of Different Strategy Options June 24, 2015

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マーティン・リーブス(Martin Reeves)
ボストン コンサルティング グループのシニアパートナー(ニューヨークオフィス)。同社ブルース・ヘンダーソン研究所のディレクター。新刊Your Strategy Needs a Strategy(HBR Press, 2015)の筆頭著者。

クヌート・ハーネス(Knut Haanaes)
ボストン コンサルティング グループのパートナー(ジュネーブオフィス)。BCGストラテジー・プラクティスのグローバルリーダー。

ジャンメジャヤ・シンハ(Janmejaya Sinha)
ボストン コンサルティング グループのアジア・パシフィック地区チェアマン。ムンバイオフィスのシニアパートナー。