靴ひもの結び方を教えられますか?

枝廣:すごいなあ。そうすると、良いコーチを育てる、良い指導者を育てることは、それがどういうボールの形をしていうようが関係ないということですね。

中竹:そうなんです。だから海外にライセンスを取得しに行ったとき、僕はラグビーの指導者なのに、まずやらされたのが靴ひもの結び方をだれかに教えることでした。

枝廣:もうボールすらない(笑)。

中竹:そう(笑)。ちゃんと教えられるようになるには原理があって、人はアクションをしなければ物事をつかめない。だから、教える場面をいかに提供するかなんです。でもそれに気づかず、講義しちゃうんですよね。

枝廣:ああ……なるほど。

中竹:教え方っていうのはこうだよって。シュートを打つならシュートをさせないとうまくならない、だから実際に教えさせないといけないのに、結局研修に来ている人たちはだれも教える場面を持たず、ひたすら話を聞いているだけ。講義で学んだことが現場につながらない仕組みになってしまっているんです。

枝廣:ドキッとする話ですね……。

中竹:ですよね。この仕事に就いて痛感したのは、練習の場面ひとつをとっても、次の練習や試合へのつながりを意識しながら、常に俯瞰して全体や仕組みを見ているかという、いわゆるシステム思考的な物の見方だったんです。

枝廣:俯瞰して全体を見るというのは、まさにシステム思考の本質だと思います。一歩引いて、これは何につながっているんだろう?と考えて、たとえばラグビーなら、練習や試合に向けてシナリオというかストーリーを落とし込んでいくことですよね。

中竹:はい。エディ・ジョーンズという監督は、その点でも優れていたと思います。南アフリカ戦で勝つことを目標に設定して、その一戦につながるように日々のトレーニングや練習試合のマッチメイクなどを徹底的にプランニングしていった。それも、最高のパターンから最悪のパターンまで想定しながら、チームの全体と部分を行ったり来たりしながらです。エディもシステム思考家のひとりと言えるかもしれませんね(笑)。