小売業や農業では昔から、季節労働が行われてきた。その概念をホワイトカラーの市場に採り入れることは、一般的なフルタイム雇用のモデルに比べて明らかな利点がある。好況時に人を雇い入れ、不況時には完全に解雇するという悪循環を絶つことで、労働者、雇用主、そして社会に大いなるメリットがもたらされるのである。

●労働者のメリット

 現在フルタイムで勤務していても、不景気に見舞われると解雇されて、しばらくの間は完全に失業する可能性のある人は大勢いる。フレキシブル労働によって、不景気でもおおむね仕事があるという状態になるだろう。それに伴い、以下のような負担が減る、あるいはなくなると思われる。

・新しい職を得るための求職調査と学習にかかる、多額の費用
・家族が雇用主負担の医療保険の対象から外れた場合に生じる、自己負担の医療費の増加
・転職を重ねると手当の制度が頻繁に変わるため、退職後に備える貯蓄がますます困難になる問題
・予定外の収入の停止や減少によって生じる、負債の急増
・失業による「職の空白期間」が、マイナスに評価されるという不公平

●雇用主のメリット

 企業にとって、フルタイムの正社員となる人を新たに探し、審査して採用し、教育するには非常に高いコストがかかる。カリフォルニア大学バークレー校の労働・雇用研究所によれば、管理職に新たな人材を補充する時のコストは、その人に支払う年間給与の150%分に相当するという(英語記事)。それより低いポジションでの補充にかかるコストはもっと低いが、仮に管理職の半分(75%)だとしても、1人を雇用するコストとしてはきわめて高額だ。

 また、フォーチュン1000企業でフルタイムの就職志望者を採用・配置する際、その手続きと承認には3~6ヵ月かかることもしばしばである。採用の準備がこれほど遅ければ、商機にもマイナスとなりかねない。加えて、雇用と解雇は「ブルウィップ効果」の影響を受ける。企業は現在と未来に関する情報を完全には把握できないため、景気の変動に応じて労働力を拡大または縮小する際に、常に対応が後れている。だが、フレキシブルな労働形態によってこの対応が容易になるため、企業はより迅速かつ正確に労働力を調整できるようになる。

●社会にもたらされるメリット

 失職者への社会保障給付(失業手当やメディケイド〈低所得者向けの公的医療保険制度〉など)の必要性とコストは低下するだろう。さらに、フレキシブル労働は、ホワイトカラーのエリート職から通常は閉め出されている人々(育児中の人、学生、病気の家族を介護している人など)に対しても、経済機会を生み出すと思われる。これにより、労働力の裾野が拡大し、より幅広く多様な人材プールが生まれるはずだ。

 さて、フレキシブル労働という慣行を実際に普及させるうえで、最後の決め手となるのは何か。それは、正社員と個人事業主の中間に当たる労働者のカテゴリーをつくることである。

 米国は、カナダ、ドイツ、スペインなどの国々に倣って、ディペンデント・コントラクターという労働形態を第3の道として導入すべきだ(例:組織から給与や経費の支払いは受けるが、福利厚生は受けない)。そのためには、W-2(源泉徴収票)の規定事項を緩和し、かつ現在の混沌とした1099(個人事業主への支払調書)の規定に明確性と秩序をもたらす必要がある。

 幸い、米国人はこれよりはるかに複雑な問題を解決してきた。フリーランスの仕事がホワイトカラーの雇用をますます奪っている現状では、米国歳入庁(IRS)と労働省は、行動を起こすよりほかない。それこそが、あらゆる立場の人々にとってより魅力的なモデルを築く布石となるだろう。フレキシブル労働は、いまこそまさに望ましいのである。

HBR.ORG原文:The Dawning of the Age of Flex Labor September 04, 2015

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アンドレイ・ハジウ(Andrei Hagiu)
ハーバード・ビジネススクール准教授。専門は経営戦略。

 

 

ロブ・ビーダーマン(Rob Biederman)
アワリーナード(HourlyNerd)の共同設立者兼CEO。同社は多数の一流コンサルタントが登録するグローバルな人材マーケットプレイス。ビジネス課題の解決を低価格で支援する。