競争と協調を見極め、進むべき方向性を共有したい

――創意工夫が生まれる環境づくりを含め、日本のものづくりに対する国としての取り組みを教えてください。

 6月に発表された「日本再興戦略 改訂2015」のなかでも、IoTやビッグデータ、人工知能といった新しいツールが、既存の産業構造や就業構造に変革をもたらす可能性があり、遅滞なく対応することが重要であると情報発信しました。具体的な方向性については、まだ明確に示されていませんが、新たに設置された「新産業構造部会」において、今後、官民が共有できるビジョンを策定するとともに、官民に求められる対応についても検討が進められています。

 製造業に関連しては、「ロボット革命イニシアティブ協議会」を立ち上げました。これは、ロボット革命実現会議で策定され、日本経済再生本部で決定された「ロボット新戦略」をIoT時代に即応しつつ強力に推進するために、企業、事業者団体、大学・研究機関などが政府との連携のもと、課題を共有し、課題解決のための横断的な取り組みを行う目的で設置されたものです。日本のものづくりの強みを活かし、弱みを補完しながら、どういったことを考えていけば、あるいはどういった環境を整えていけば有効なのかを検討しているところです。

 また、中小企業にとっても、IoTが使いやすい環境をどう整備していくかも重要な課題です。資金力があり、IT活用能力に長けている大企業だけではなく、中小企業を含めたサプライチェーン全体として、IoTを活用した新たな取り組みが加速するような環境づくりを推進していきたいと考えています。

――IoT時代のものづくりに問われる視点、重要なポイントは何でしょう。

 ものをつくっていればいい時代は終わって、これからはどう使うかを売る時代に変わっていくでしょう。そうした視点を持つことができていない企業はまだまだ多いのが現状です。日本のものづくりの強さを否定することはありません。しかし、時代とともに顧客ニーズは変わり、世のなかのトレンドも変わるなかで、いままでの「カイゼン」だけの連続的な取り組みをやっているだけでは、新しい波に飲み込まれてしまうかもしれません。慌てる必要はありませんが、世界的な流れを直視し、中長期で見てどういった方向に変わっていくのか、そのなかで自分たちの“売り”をどう変えていくのか考えていく必要があるでしょう。

 もう一つ、今後は競争と協調が大きなポイントになります。個々の企業の枠を超え、強調すべき部分は手を取り合っていくことが大切です。ドイツのインダストリー4.0には、競争領域と協調領域を明確にしたうえで、協調するところは各社バラバラにコストをかけるのはやめましょう、といった意味合いも含まれています。協調はこれまで日本企業が苦手だったことかもしれませんが、競争と協調を見極めながら、変化の方向性を経済、産業界で共有していくことが重要です。

(構成/堀田栄治 撮影/三浦康史)