3.革新的なアイデアを、どう受け入れるか

 今日の企業経営で最も難しい課題の1つは、技術進歩のサイクルがしばしば計画立案のサイクルよりも速まることだ。企業はそれに対応すべく、絶えず調整に追われることになる。アジャイルソフトウェア開発に触発されて生まれたホラクラシーは、変化に適応するために最適化されているので、この種の調整はごく当然のこととして実行する。

 破壊的変化の打撃を受けた企業には、興味深い点がある。自社のビジネスを覆すアイデアの存在自体には気づいていながら、その潜在力を理解しなかったケースが多いことだ。ウォルマートとシアーズ、ネットフリックスとブロックバスター、グーグルとヤフー。いずれの事例でも、後者は市場リーダーとして、新興企業であった前者に投資する、あるいは提携するチャンスがあったにもかかわらず、そうはせずに破壊的打撃を被ることになった。

 ホラクラシーは、継続的な「ガバナンス会議」で役割と責任の見直しを図っていくことで、常に変化に適応する。だが、これには多大な時間と労力を費やす必要があり、多くの企業はそれを望まないか、実行できないかもしれない。小売業のように現場の従業員をたくさん抱える業界では、ホラクラシーはおそらく実用的でない。

 変化への適応という課題に取り組む1つの方法は、次のように自問することだ。「自社に変革をもたらすアイデアを誰かが持っているとして、その人はアイデアをどのように売り込むのか」

 ウォルマートの創業者サム・ウォルトンのような人物が、新しい小売りのコンセプトを持って自社にやって来たとしよう。あるいはビデオレンタルの新しいアイデアを持って来た、ネットフリックスのリード・ヘイスティングスでもよい。自社はどう対応するだろうか。彼らの話を最初に聞くのは誰なのか。どんな態度で迎えるのか。やがて偉大な起業家となる人が、すでに従業員の中にいるとしたら、そのアイデアをうまく引き出せるだろうか。

 今日ではどの企業も、革新の文化を育む必要がある。あなたの会社の現状はどうだろうか。

4.団結と多様性のバランスをどう取るか

 経営者たちの間では、部門・部署間の壁(サイロ)を壊して組織内の情報の流れをよくしよう、と盛んに言われる。だが、それらは特定の任務のために最適化された集合体として、必要な存在でもある。さらに、壁を壊すはずの組織再編の取り組みは、必ず別の場所で壁を生む。

 本当に重要なのは、団結と多様性のバランスを取ることだ。団結がなければ目的は共有されない。しかし、そこに多様性がなければ集団浅慮が生まれ、共通の目的はやがて妥当性を失うだろう。したがって、市場での新しい情報に適応しながら効率的な運営も両立させるには、両方が適度に必要だ。

 この実証例として、ブロードウェイのミュージカルに関する研究がある。演目のキャストやスタッフの誰もが、以前に他のどのメンバーとも一緒に仕事をしたことがない場合、興行成績と芸術的完成度の両面で冴えない結果だった。ところが、メンバー内で既知の間柄が多すぎても、結果は同様に芳しくなかったという(英語論文)。

 伝統的な組織では、過度の同調が生じることも多い。だが、ホラクラシーやそれに類似するモデルは、この問題を単に悪化させるだけではないだろうか。なぜなら皮肉にも、指揮系統ではなく非公式なつながりに頼るホラクラシーでは、同調の弊害がより見えにくくなるからだ。ヒエラルキー型の組織では(その欠陥が何であれ)、リーダーが方向転換を決断して集団浅慮に対抗できる。非公式な関係性で動くホラクラシーの場合、こうした転換がどのように起こるのか、私には定かでない。

 ホラクラシーの有効性について、判定はまだ下されていない。伝統的な組織がそうであったように、ホラクラシーも時間をかけて発展していくのだろう。どの企業も、結局は独自の道を選択しなければならない。明白なのは、現状維持は許されないことだ。誰もが自分自身に厳しい問いを突き付け、絶えずより良い答えを見つけ出す必要がある。


HBR.ORG原文:You Don’t Need to Adopt Holacracy to Get Some of Its Benefits August 28, 2015

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グレッグ・サテル(Greg Satell)
ビジネスコンサルタント。コンテンツ、戦略、イノベーションを専門とする。『フォーブス』誌にも定期的に寄稿している。