3)教育

 いま、AIやその基礎技術となる機械学習の教育も進んでいる。たとえば、リクルートのAI研究所Recruit Institute of Technologyでアドバイザーを務める米カーネギーメロン大学教授トム・ミッチェル氏は、機械学習の代表的教科書『Machine Learning』の著者であり、かつ、世界で初めて機械学習の学部・研究科を設立することで機械学習の普及に貢献している。

 同氏はこれまで数多くのスタートアップを主導し、自身がファウンダーとして設立した企業の一部を米国大手求人サイトのモンスタードットコム(monster.com)に売却した経験を持っており、ビジネス経験も教育現場で活かされている。前回紹介したオレン・エチオーニ氏や、「Google X Lab」の立ち上げに携わり、自動走行自動車などのプロジェクトの研究開発に従事しているセバスチャン・スラン氏も彼の教え子として有名だ。

 そのスラン氏が現在、ファウンダーとして注力しているスタートアップがユダシティー(Udacity)だ。同社は米国を拠点にデータサイエンス、モバイル開発やコンピュータサイエンスなど最先端のテクノロジー分野でキャリアアップにつながる教育サービスをオンラインで提供しており、コンピュータサイエンスの入門コースからAIなどの上級コースまで、多岐にわたるラインナップを取り揃えている。

 たとえば、ユダシティーが提供する「人工知能入門」講座では、スラン氏とグーグルのリサーチディレクターのピーター・ノーヴィグ氏が講師を務めており、現代のAIに関する基本技術や専門的知識を学ぶことができる。なお、2013年秋より、リクルートはユダシティーの一部コンテンツの日本語ローカライズを行うなどの協業を実施している。

 また、人工知能や機械学習の実践の場として、世界最大のデータサイエンティストコミュニティであるカグル(Kaggle)が有名だ。同社では、企業や研究者がデータを提供し、カグルコミュニティに所属する世界194ヵ国、30万人以上のデータサイエンティストや研究者が最適モデルを競い合うコンペティションの運営を行っている。コミュニティには、物理、生物、化学、経済、金融、数学、統計、コンピュータ科学などの幅広い領域の研究者が所属しており、カグル上で実施されるコンペに毎日2500人以上が参加。さらにコミュニティのフォーラムでは、新しい解析手法やアルゴリズム、分析の秘訣など毎日200以上の投稿がされており、データサイエンティストがスキルやナレッジを身につける学習の場にもなっている。

 ここでもリクルートでは、日本企業初の共催となるデータ予測コンペティション「RECRUIT Challenge」を実施しており、世界中から1000以上のチームがこのコンペティションに参加している。さらには、学生教育に特化した「RECRUIT Challenge for Student」も実施している。

 以上、ここまで1)~3)で解説してきたように、現在のAIブームの背景には、アルゴリズムの進化だけでなく、データ量の大幅な増加、ビジネスエコシステムの完成、そして、オンライン化によるAI教育のダウンサイジングが挙げられる。これらを総合的に考えた際、その背景に呼応した「人工知能“教育”」のオープン化の姿がそこにある。

 このように、今後はAI教育そのものがさらなる進化を遂げていくと筆者は考えている。

 次回更新は、12月11日(金)を予定。