ポイント3:外部資源とネットワークを最大限に活用する

 EMNCは、3つの点で外部リソースの使い方に優れている。第1に、規模が競争優位に直結するモデルを作り、それに沿って海外大型買収を繰り返し一気に成長する。第2に、M&Aを通じて買った相手の強みを徹底学習し吸収し、事業領域も経営手法も含め、自らを完全に作り変えてしまう企業もある。そして第3に、必ずしも買収に頼らずとも、進出すべき国の基準を決め、それに合う国には現地企業やグローバル競合の資産を借りて進出する。

 M&Aに関する日本企業への批判と教訓はすでに広く言われているが、あらためて何が学びとなるのだろうか。

 日本企業では、アライアンスに関する「戦略」として、M&Aの金額目標を掲げる例が多い。これは投資家向けにコミットメントを示す意味はあるが、本当に重要なのは何のために何を買うかである。買収以外の組み方も含めて、目的とその実現手段としてのシナリオを明確に持つべきである。また、買収した後のPMI (Post Merger Integration)に苦労する企業が余りに多い。買収が強みにつながるロジックと仕組みを作り上げる必要がある。買収先に優れたグローバル経営の仕組みがあり、それを超える手法を示して管理することが難しければ、相手の手法を学習して改良し、双方が使えるハイブリッドを作ったほうが早い。

ポイント4:失敗することを前提に、それを強みに転化する

 EMNCは、失敗を許容しそれを成功につなげるDNAを、効果的な仕組みとして持っている。事業戦略のレベルでは、彼らは出発点となる「型」を決め、失敗しながら調整する。基本モデルを徹底的に磨き上げることで、それを他国に展開した際に素早く修正することができる。個人のレベルでは、評価と学習を巧みに使いこなす。常に高い業績目標を設定する代わりに、失敗を減点主義で考えず、むしろそれを当然として何を学習検証したかを評価し挑戦を促す。さらに小失敗は織り込んで現場に任せ、大失敗のリスクはリーダーがとる。権限委譲を徹底する代わりに、一定の高リスクな判断はトップが行うことで、管理と自由のバランスを取る。

 このような経営手法は、日本に限らず多くの先進国大企業と、大きな違いがある。

 組織の官僚化が進むと、いつしか失敗した者は不適格者とされ、失敗しない者が高く評価されるようになる。そして結果を数字の達成だけで評価すれば、人は目標を下げて安全確実な逃げ道を確保する。不安定な市場で高い成長を目指すためには、失敗した人を貴重な学習資産とし、学びを共有し再挑戦を促す評価を作るべきである。新興国事業や新事業など高リスクな任務については、結果もさることながら、どのような仮説があり、どこまで検証したのか、次につながる学びと仮説を得られたのか、に重きを置いて評価する必要がある。

 EMNCから日本企業が何を学べるかをシンプルに考えると、これら4点について不足した切り口を補強していくべき、ということになる。新興国企業の躍進が突きつける1つのメッセージは、組織の歪みを常に修正し、テンション高く戦闘力を高める努力の必要性である。