4つのポイントで、組織のテンションと戦闘力を高める

 前回までのポイントを基に、もう一度、日本企業にとっての示唆を考えてみよう。EMNCの成功の裏には、4つの特徴的な強みがある。それらはどれも、日本をはじめとする先進国企業の海外展開における原理原則を問い直すものである。

ポイント1:変わり続けることで競争を勝ち抜く

 EMNCは、変わり続けることで強みを作る。そこには3つのパターンがある。第1に、彼らは母国で強みと勝ちパターンを固め、それが当てはまる市場を世界中で見つけて高速で展開していく。特に自国と環境が似た新興国で、矢継ぎ早に展開先を急拡大するEMNCは多い。そして第2に、培った勝ちパターンをより高度化・抽象化し、母国に似ていない重要市場も攻略する。単純な横展開を超えて、強みの背後にある組織能力や仕組みを活かし、勝ちパターン自体を変化させていくのである。さらに第3に、特定の強みに依存せず、各地で機会に応じて投資し、実験を繰り返すことで勝つ企業もある。彼らは生き残った事業を自らの強みとするために、投資管理の力・組織・仕組みを磨くことで勝つ。

 ここから日本企業は何を学べるだろうか。

 多くの日本企業が考えがちなように、今ある商品・サービス(強み)がそのまま通用する海外市場を探して進出するだけでは、大きな勝ちを収めることは難しい。そしてその展開はどうしても遅くなる。なぜその強みが母国で成立しうまくいったのか、源になる要素を因数分解し、それを現地市場の現実とクロスさせると何ができるか、を考え抜くべきである。それが全く違う市場に出て戦う際の新しい強みとなる。また、新規の海外進出において、全ての国で100%の成功を目指すのは非現実的である。一定の確率で生まれる失敗を投資と割り切り、それも織り込んだ投資ポートフォリオ全体を構想し管理する力を磨くべきである。

ポイント2:社外の現実を見据え、自ら変化を作り出す

 EMNCは「超」現実志向である。彼らは市場や規制の最新動向とその変化の予兆を常に注視し、機が熟すと一気呵成に投資し攻める。また同時に、環境をただ受け入れるのでなく、それを超えようと努める。政府・大学・NPOや異業種他社などカギとなるプレイヤーに働きかけ、競争に有利な環境や自社の事業に使えるインフラを整える。外部の制度的要因を、自らの競争優位に活用するのである。

 ひるがえって、我々はどうだろうか。

 新興国から遠い平和な日本の本社で、断片的な二次情報を後追いで分析しても、市場の実態はつかめない。決定権のある人間が実情を知らなければ、機会が来てもそれをとらえることは難しい。高いポジションの人間が重要な現場を深く見る機会を作り、また各地での先の変化を読むインテリジェンス能力を高め、チャンスに一気に投資する体制を組む必要がある。また、外部環境を全部与えられた条件として受け入れていては、ルールや環境自体を武器にする海外競合のいいように翻弄される。社会課題の解決など緊急性と訴求力の高い軸を使うことで、企業が環境に働きかけられる余地は広がっている。自らに有利な環境を形成する戦略能力を持つことが、急務である。