経済界と科学界のギャップをいかに埋めるのか

 連載を通して、劇場化する人工知能の全体像を以下のフレームワークで解説する。一足飛びでこれを解説するのは少々難易度が高いため、人工知能が劇場化するに至るまでのプロセスを簡単な例を用いて順を追って説明させてほしい。

 まず、AさんとBさんという二人だけの経済界を仮定する。いま、BさんはAさんに肩もみをし、100円を得るとしよう。誤解を恐れず単純化すれば、この経済界のGDPは100円で、Bさんの所得は100円となる。

 そこにCさんが肩もみロボットを開発して、Bさんに80円で売ったとしよう。このときGDPは100円で変わらず、Bさんの所得は20円となる。

 Bさんが肩もみロボット5体をCさんから購入したことで、生産性も5倍にあがり、A1〜A5さんに一気に肩もみができるようになったとしよう。するとGDPは500円になり、Bさんの所得は100円となる。

 さらに、Bさんが肩もみロボット10体にすることで、GDPは1000円になり、Bさんの所得は200円、Cさんへのロボット開発の総投資額は800円となる。

 最後に、Cさん対して従来の倍である1体160円まで技術投資を引き上げることで、肩もみロボットのアルゴリズムは人間が提供できるサービスの付加価値を超え、これまで100円だった単価が200円にアップしたとすると、GDPは2000円、Bさんの所得は400円、Cさんへのロボット開発の総投資額は1600円となる。

 以上が人工知能“劇場”の基本構造だ。

 Bさんというミクロ経済にとっても、A・B・Cさんを含むマクロ経済にとってもハッピーな結果となっているだけでなく、サービスの需要者総数も向上し、科学界への総投資額も増えている。

 このようにすべての主体にとってWin-Winとなる「脚本」を描き、スピード感を持ってすべてのステークホルダーを口説き切る「演出」が、人工知能ビジネスの勝負の鍵である。そして脚本と演出次第では、ビジネスの成功率をより高めることができるのだ。