業種間、企業間を越えて水平につなぐビジネスモデルの構築を

――オープンデータの一方で、企業側に視点を移すと、情報を公開したくないという事情から、日本ではIoTの普及が遅れているように思われます。対応策はありますか。

 クローズドなIoT、または業界単位の縦割りのIoTはすでに存在します。たとえば、HEMS(Home Energy Management System)などがそうです。ユーザーからベンダーまでを垂直につなぎ、電気やガスの使用量を見える化することで、エネルギーの節約を可能にしています。問題は、垂直ではなく、水平につなげるビジネスモデルが存在しないことです。10年前、我々が提唱するユビキタス・ネットワーキングがはやったときに、業種間、企業間を越えて水平に情報を共有するビジネスモデルが大きな課題でした。そこ課題に対して、欧米企業は辛抱強く10年間検討し続けたのでしょう。それがいま、インダストリー4.0やインダストリアル・インターネットとなって逆輸入されているのです。

 公共交通オープンデータも、IoTの一つと見ることができます。電車の車両がいま、どこを走っているか追跡する運行管理システムは従来から存在しました。それは鉄道業界という閉じた世界での一種のユビキタスシステムだったわけです。ところがデータをオープン化することで、多くのIT企業が公共交通情報提供サービス分野に参入し、それだけでなく、ゲーム会社や一般のプログラマーなど、さまざまな人々を巻き込んでコストを下げたり、ソフト開発が進んだ事例は、オープンデータ活用がIoTの水平展開を広げたビジネスモデルといえるのではないでしょうか。

――水平軸での連携が重要とのことですが、最後に企業に対するアドバイスをお願いします。

 一つは、少しやったぐらいであきらめないこと。しつこいくらいに取り組んだほうがいい。二つ目は、日本企業は「急がば回れ」が不得意です。何事も最短距離で行こうとします。欧米企業のビジネスのやり方を見ていると、必ず汎用化を考えています。広く考えて取り組む余裕があってもいいのではないでしょうか。そして三つ目は、イノベーションのパターンです。日本は先端を突き抜けるような曲芸は得意でも、欧米のように寝ていても儲かるような仕組みをつくることが下手に思えます。

 エンジニアの立場から言いたいのは、文系の方々の知見や経験を最大限投入し、新しいビジネスモデルのアイデア出しをお願いしたいということ。ありふれた言い方かもしれませんが、文系と理系がより親密にコラボレーションすれば、日本のITはもっと盛り上がると考えています。

(構成/堀田栄治 撮影/三浦康史)