無制限休暇制度の導入に成功している企業では、その下地としてすでに強い信頼関係が築かれている。

 だがそうでなくても、「人は他者への信頼を示すと、他者からもより信頼されるようになる」という研究結果がある。誰かを強く信じると、その相手が別の人に対しても信頼感を高めるという反応は、ゲーム理論の研究者たちによってたびたび観察されている。自分に向けられた信頼を、無関係の第三者にまで示す傾向が高まり、信頼の輪が広がっていくのだ。したがって無制限休暇のような方針は、既存の信頼関係を活かせるだけでなく、信頼のさらなる強化にもつながる、という理論的な根拠がある。

 これこそまさに、ネットフリックスが経験したことである(本誌「シリコンバレーを魅了したネットフリックスの人材管理」を参照)。同社のリーダーたちは、無制限休暇制度の導入後間もなく、旅費と経費に関する規則も大幅に簡素化した。用途と精算について細かく指定するのではなく、5つのシンプルな言葉だけで方針を示したのだ。「ネットフリックスの利益を最優先して行動せよ(Act in Netflix’s best interest.)」

 休暇に関する規則撤廃と同様に、この信頼に基づく変更に対して、従業員は責任ある行動で応えた。そのうえ、高くつく旅行代理店を使う必要がなくなったため経費の節減にもつながった。

 無制限休暇への転換は、そう簡単にはいかないかもしれない。新たな方針が誠実かつ公平であると従業員に納得してもらい、信頼が広がるようにするのは、難しいことだ。導入に成功した企業の多くは、休暇を取得すると上司が喜ぶ雰囲気をつくっている。加えて、多くのマネジャーや上級幹部は率先して長期の休みを取り、それを公にしている。休暇を取っても勤務評定や今後のキャリアに悪影響を及ぼさないという明確なメッセージを送っているのだ。

 なかには(少なくとも導入初期の試みとして)、従業員に金銭的報酬を与えて休みを促している企業さえある。たとえばソフトウェア企業のエバーノートは、従業員が1週間以上の休暇を取ると1000ドルのボーナスを与えている。またマーケティング企業のハブスポットは、セールス担当者の休暇時期に合わせて、年に2回月次ノルマを減らしている。

 信頼の文化が水平方向にも浸透している企業では、休暇制限の撤廃は個人レベルでもさらなるメリットをもたらしうる。

 数年前に休暇を無制限にしたカナダのウィンザー地域病院では、従業員が充分な静養を経て仕事を再開できているだけでなく、横の協力関係も改善している。変更前は、休暇を取る同僚は否定的な目で見られ、他者に穴埋めを強いる存在とされていた。いまでは病院の運営はチームの任務と見なされ、スケジュール調整にとどまらず、より広範な部分でチームワークが行き渡っている。休暇中は同僚が仕事をカバーしてくれるという安心があるため、復帰後も互いに信頼し合えるようになったのだ。

 無制限休暇が休みの多寡の問題ではないことは、これら限られた例だけでもおわかりであろう。むしろ、経営陣に対する従業員の信頼度を測る手段と言える。その信頼とは、リーダーが従業員を信じることから生まれるものだ。この方針が自社に適しているかを検討する立場にある幹部は、知っておくべきことがある。リーダーと従業員が信頼し合う文化が築けていないなら、無制限休暇制度はうまくいかないだろう、と。

 もっとも、その前に取り組むべきより重大な課題があるかもしれないが。


HBR.ORG原文:How to Make Unlimited Vacation Time Work at Your Company June 15, 2015

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デイビッド・バーカス(David Burkus)
オーラル・ロバーツ大学の助教授。経営学を担当。リーダーシップ、イノベーション、戦略のアイデアをシェアするLDRLB(リーダーラボ)の創設者。『どうしてあの人はクリエイティブなのか?創造性と革新性のある未来を手に入れるための本』(ビー・エヌ・エヌ新社) がある。