「アライアンス」は、日本企業に根付くのか?

 篠田氏は、「『アライアンス』はドライな取引であり、フリーランスや専門職のみができると誤解されがちだが、普通のビジネスマンにも当てはめられる関係」としている。

 篠田氏はイベント開始の2時間前にEvernote創業者のフィル・リービン氏と会談したことを明かした。リービン氏は「今まで社員が辞めることがショックだったが、本を読んでからは、当社では成し得なかった仕事に挑戦する元社員に対して、『それに価する人材を自分たちが育てた』と誇りを持てるようになった」との感想を話していたという。さらに、「終身雇用は極めて危険。イノベーションは転職をきっかけに起こることがしばしばあり、終身雇用にこだわるとその機会を逃してしまう」とも語っていたとのことだ。

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西口敦氏

 プレゼンターとして登壇したコンサルタントの西口敦氏は、「仕事の目的、成果の定義が明確になっていること。コミュニケーション能力、フラットでフェアな仕事への向き合い方が双方に備わっていること。これらの条件が揃っていれば、日本の大企業でも外資でもベンチャー企業でも、『アライアンス』の関係を実現できると思っている」と話した。

 しかし、「アライアンス」はシリコンバレーでも標準化されている雇用関係ではなく、長く終身雇用制度を守ってきた日本では、なおさら浸透しにくい考え方だという見方もある。イベントに参加したビジネスパーソンたちは、どのように感じているのだろうか。

 イベントでは、ワールド・カフェ形式で議論が行われた。4人一組で、「『アライアンス』の概念が日本の大企業でも応用可能か、必要か」などについて20分間の時間制限を設けて話し合う方式だ。さらに、終了後はグループ内の1人を残して別のテーブルに移動。残った1人は前のグループで出された意見を新しいメンバーに伝え、議論を深めていく。

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吉沢康弘氏

 司会を担当したインクルージョン・ジャパンの取締役・吉沢康弘氏はこの方式を「他花受粉」というコンセプトであると説明。「蜂が花粉をつけながらいろいろな花に蜜を吸いに行き、DNAを交配させることで新しい種が生まれる。それと同じでメンバーを入れ替えることによって切り口が代わり、アイディアが広がっていく」(吉沢氏)のだという。

 せっかくなので、実際に筆者も議論に参加してレポートすることにした。筆者は20代の間に3社を渡り歩き、現在はフリーランスとして活動する転職経験組だ。退職した会社とは現在も交流があり、情報交換や仕事の相談などもするため「アライアンス」の考え方には共感する部分が多い。「必要か」と聞かれれば、即座に「必要」と答える。

 しかし、1グループ目の議論を聞く限り、「大企業に応用可能」かどうかは難しい問題だと感じた。グループのメンバーによると、特に中堅以上のなかには、“ぶら下がり社員”が多く、意識を改革するのが困難だというのである。「コミットメント期間」という発想を導入して生産性を上げようとしても、社員の意識がついてこないだろうというのだ。

 メンバーから出された案は、「入社歴の浅い社員を中心に、『アライアンス』の考えを浸透させていく」というもの。「鉄は熱いうちに打て」ではないが、動きの鈍い一部の中堅以上を対象とするのは現実的には難しいため、まずは若手のマインドを変えて会社に根付かせていくというわけだ。さらに若手でも全員が「アライアンス」的な働き方を求めたり、できたりするわけではないため、キャリアプランを複数用意する必要があるとも。