調和は過剰に重視されがちであると強調し、反論と検証を重んじるアマゾンの姿勢は、行動科学における主要な研究成果と一致している。研究によれば、企業を含めた多くの集団が成果を上げられない、あるいは本来の実力を発揮できない理由は、集団の構成員が持つ情報と創造性を十分に活用しないためである(本誌論文「いま明かされる集団思考のメカニズム」を参照)。このような集団は、自信に満ちた(しかし了見の狭い)リーダーに率いられ、方針と手順を確立したうえで行動するが、集団内での十分な検証が事前に、あるいは継続的に行われない。

 もちろん、アマゾンには膨大なデータという強みがあるので、何が機能して何が機能しないかを根拠に基づいて探求できる。だがデータだけでは不十分であり、そこから意味を形成するには人の介在が必要だ。アマゾンでは、意味の形成(センスメイキング)が重視されている。

 社員から創造性と正直な批評を引き出すための手段を意識的に講じれば、その程度に応じて集団浅慮を回避して、成果を格段に高めることにつながる。そして、調和を過度に重んじるせいで十分な情報に基づく判断を重視しない企業よりも、優れた意思決定ができるようになる。

『ニューヨーク・タイムズ』紙の今回の記事は、アマゾンの負の側面ばかり描き、メディアの注目はそちらに集中している。コンセンサスと自己満足を避ける優れた慣行の背後には、苛烈な競争に加え、無慈悲で辛辣で、時に残酷な風土があると記事は伝えている。その真偽はどうであれ、重大なのは次の点を知ることだ。良い会社は意見の対立を奨励し、調和は善であるという前提を退けると同時に、社員に礼節を持って接することができるのである。

 賢明な会社はこれらをうまく両立できる。社員のアイデアと想像力を十分に活用し、彼らを辱めたりはしないからだ。調和があまりに重んじられていること、そしてすべての社員に敬意を持って接しなければならないこと。これらを肝に銘じておけば、1人ひとりの尊厳を認めることができるはずである。


HBR.ORG原文:Amazon Is Right That Disagreement Results in Better Decisions August 18, 2015

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キャス・サンスティーン(Cass R. Sunstein)
ハーバード大学ロースクールのロバート・ウォームズリー記念講座ユニバーシティ・プロフェッサー。共著にWiser: Getting Beyond Groupthink to Make Groups Smarter、『実践 行動経済学』などがある。